2011 Fiscal Year Annual Research Report
マイボーム腺および眼表面上皮の性ホルモンによる機能変化に関わる研究
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23890181
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
鈴木 智 京都府立医科大学, 医学研究科(眼科学), 客員講師 (30613236)
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Keywords | マイボーム腺 / 性ホルモン / ドライアイ / マイボーム腺機能不全 / 酒さ |
Research Abstract |
「性ホルモンによるマイボーム腺と眼表面上皮細胞のヒトin vivoにおける細胞分化制御の解明のための研究」については、若年成人女性(平均年齢26歳)、若年成人男性(平均年齢28歳)、閉経後の女性(平均年齢53歳)のマイボーム腺の生理機能について検討した。検討項目は、生体顕微鏡を用いたマイボーム腺開口部の大きさ、マイボメトリー法によるマイボーム腺脂質分泌量、涙液スペキュラーによる涙液層破壊時間、マイボグラフィーによるマイボーム腺の形態、そして血清中の性ホルモン濃度である。若年女性では血清エストラジオール、プロゲステロンがともにマイボーム腺機能に負の影響を与えるのに対し、男性では血清テストステロンが正の、閉経後女性では血清プロゲステロンとテストステロンが正の影響を与えるという結果が得られた。すなわち、マイボーム腺の生理学的機能は、性別、閉経前後で異なることが明らかとなった。これらの結果は、我々が提唱しているマイボーム腺炎角結膜上皮症が、若年女性に圧倒的に多く発症していること、月経の排卵期あたりで炎症が増悪しやすいこととの関連を推測させる。また、マイボーム腺炎角結膜上皮症と欧米における小児の酒さ性眼瞼角結膜炎との酷似性が推定された。マイボーム腺炎角結膜上皮症の病態解明と治療法の確立は臨床的に非常に意義のあるものと考えられ、上述の研究成果の一部は、2月の角膜カンファランスで口演し、論文としても執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展しているが、性ホルモンによるヒトマイボーム腺培養細胞を用いた基礎研究については、ハーバード大学のDavid Sullivan教授より培養細胞を譲り受けることが、この5月の国際学会(ARVO2012)で決定したため、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、さらにマイボーム腺分泌物(meibum)の性状解析を行い、性ホルモンによる脂質と蛋白(特に抗菌ペプチド)の発現・分泌の変化などを明らかにするとともに、その変化に伴う常在細菌叢の変化についても明らかにする予定である。それによって、女性全般に多いドライアイやマイボーム腺機能不全、若年女性に多いマイボーム腺炎角結膜上皮症の新規治療法を確立する。
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