2011 Fiscal Year Annual Research Report
精神科保護室の看護ケアに関する教育支援ガイドラインの作成
Project/Area Number |
23890192
|
Research Institution | University of Kochi |
Principal Investigator |
畠山 卓也 高知県立大学, 看護学部, 助教 (00611948)
|
Keywords | 精神科看護 / 保護室 / 実践的知識 / 教育支援 |
Research Abstract |
本研究は,精神科看護師にとって保護室での看護ケアの経験のもつ意味を,看護師のナラティヴから解釈学的現象学の手法を用いて明らかにすることによって,臨床実践の質の向上を目指した「精神科保護室の看護ケアに関する教育支援ガイドライン」を作成することを目的としている。 平成23年度は,研究に関する倫理審査を完了した後,精神看護領域の看護師の協力を得て,10名の看護師に半構成的インタビューを実施した。データの分析と解釈については,我が国の看護学研究では用いられることの少ない,P.Recoeurの解釈学的現象学の手法を用いた。インタビューデータはすべて逐語録化した後,インタビューノートの記載内容を参照しながら,解釈用のテクストを作成した。そして,テクストを繰り返し熟読しながら,テクスト全体の意味を把握するとともに,テクスト細部の意味を理解できるよう,文脈の単位で区切り,その文脈が指し示す意味を命名し,文脈のなかに含まれている主要な要素についても抜き出した。そのうえで,P.Recoeurの特徴である『物語的自己同一性』を見いだすために,クロノロジカルな時間に着目し,ライフヒストリーを作成した。そして最終的に,作成したライフストーリーを熟読し,ライフヒストリーのなかに一貫して出現するテーマに着目し,テーマ分析を行った。この3段階のプロセスは,新たな研究協力者で新しいテーマが現れたときには,すべての研究協力者のライフヒストリーを丹念に検討することとした。 分析と解釈の結果,研究協力者は保護室での看護ケアの経験を通して,「かかわることの価値を見いだす」「試行錯誤しながら自分の看護を見いだす」「患者への罪悪感をケアのパワーに変換する」「安全を守るために努力する」というテーマが導き出された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は,精神科看護師にとって保護室でのケア経験がもつ意味について、看護師のナラティヴから解釈学的現象学の手法を用いて明らかにした。この研究のプロセスを通して、精神科看護師にとって保護室でのケアの経験のもつ意味づけを明確に示すことができるとともに、教育支援ガイドラインを作成するうえで有用な結果を得ることができたと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、対象者を3群に分けて解釈学的方法を用いた研究の実施を試みることとしていた。解釈学的方法を用いた経験の意咲を探求するというデザインの方法は、個別的な経験の意味を明らかにし、また精神科看護師に共通する経験の様相を理解するうえで有用であることは把握することができた。一方、保護室での看護ケアそのものや、その判断・実践的知識については、ガイドラインを作成するうえでは十分であるとは言えない。そこで、平成24年度では、フォーカスグループ・インタビューを追加して実施することにより、保護室での看護ケアのなかでも、特に生活支援に焦点を当てて、そのかかわり方やかかわりの工夫についての調査を追加し、本年度の研究結果と併せて「精神科保護室の看護ケアに関する教育支援ガイドライン」を作成することとした。
|