2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒツジ胎子微小環境下におけるヒトiPS細胞の造血系分化誘導に関する研究
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23890199
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
阿部 朋行 自治医科大学, 医学部, ポスト・ドクター (20610364)
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Keywords | 再生医学 / 幹細胞 / トランスレーショナルリサーチ / 移植・再生医療 / 応用動物 |
Research Abstract |
本研究では、臨床において造血幹細胞移植の前処置剤として用いられているブスルファン(BU)に着目し、(1)ヒツジ胎子におけるBU至適投与条件・安全性を検討した上で、(2)ヒトips細胞のヒツジ胎子内造血系分化誘導における生着促進作用を明らかにすることで、効率的にヒト造血の生着率が向上しうるか否か検討する。平成23年度は、(1)についての検討を行なった。 (1)BUの投与量・経路・安全性の検討 成ヒツジ(2-19ヶ月齢)において、BU5-7.5mg/kgを静脈内投与することで、骨髄(成体期の造血組織)における造血コロニー数(造血活性の指標)を一過性に減少させることが出来た。成ヒツジでの投与量を元に、ヒツジ胎子(妊娠48-52日齢)では、BU3mg/kgを母体静脈経由で投与することにより、BUは胎盤を通過して胎子に影響を及ぼし、胎子肝臓(胎子期の造血組織)における造血コロニー数を有意に減少させることが出来た。また、BU投与後の母体ヒツジにおいては、妊娠継続が困難あるいは流産するといった有害事象は観られなかった。 (2)BUの投与時期の検討 妊娠42-49日齢のヒツジ胎子に対し、胎子移植を行なう2目前あるいは6日前にBUを投与し、ヒト臍帯血CD34陽性細胞を胎子肝臓内に移植した。その後、得られた産子の骨髄を解析したところ、無処置と比較して6日前BU投与区では有意に高いヒト造血細胞生着率を得ることが出来た。 以上の研究結果から、ヒツジ胎子体内でヒトips細胞から効率的に造血幹細胞を作り出す技術において開発の足がかりが出来たと考えられる。また、ヒツジのような大型動物の胎子を用いた研究は前臨床的な試験を担っており、今回の研究成果が実用性ならびに安全面で大きく貢献できると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画のうち、平成23年度分の計画(ブスルファン投与量、経路、時期および安全性)の成果を、論文1件ならびに学会発表3件、報告出来た。昨年度の成果を元に、現在は、ヒトiPS細胞の樹立、およびヒトiPS細胞のヒツジ胎子体内での造血系分化誘導実験を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
もしヒツジ体内におけるヒトips細胞由来造血の生着レベルが向上しなかった場合、ブスルファン移植前処置によるヒト造血幹細胞の長期生着性に関して、既存のヒト造血細胞の生着促進法と比較・解析し、安全性について検討を行なった上で、論文の作成を行なう。
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Research Products
(4 results)