2011 Fiscal Year Annual Research Report
高感度定量プロテオミクスを用いた抗精神病薬の作用機序探索
Project/Area Number |
23890200
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
有銘 預世布 獨協医科大学, 医学部, 助教 (80609404)
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Keywords | 抗精神病薬 / 動物モデル / 神経精神薬理 / 定量プロテオミクス / 行動薬理 |
Research Abstract |
本年度は主に抗精神病薬の作用を評価する基盤となるモデルマウスの妥当性や表現型を多面的に評価するオープンフィールド試験、ソーシャルインタラクションテスト、ワーキングメモリー課題等の行動実験系の立ち上げとLC-MS/MSを用いた定量プロテオミクス技術による多検体タンパク質群同時定量系の樹立を行った。オープンフィールド試験により当初計画していたDISC1遺伝子に点変異(L100P)をもつマウスの自発運動量を検討した結果、遺伝子型間(野生型、ヘテロ型、ホモ型)で有意な差はなく、様々な統合失調症様行動障害を報告したClapcote et al.,2007とは異なり、Shoji et al.,2012が報告した自発運動量に差がないという結果と一致するのに加え、覚せい剤に対する感受性にも差がないとの結果を新たに見出した。これは申請時に想定していた結果とは異なるものではあったが、統合失調症脆弱性遺伝子であるDISC1遺伝子の点変異(L100P)以外に他遺伝子に僅かに残存する変異による影響を示唆しており、本研究の目的とは異なるものの未知の統合失調症様行動障害を引き起こす変異が新たに見つかる可能性を示唆している。DISCI L100Pマウスに代わる抗精神病薬の作用機序探索のための新たな動物モデルとしてフェンサイクリジン(PCP)慢性投与マウスを作成して行動解析を行った結果、既報のとおり行動感作の形成、社会性行動の低下を行動試験により確認した。それら表現型を指標にした抗精神病薬の慢性投与による影響が検討可能にした。また、多検体タンパク質群同時定量用試料調製のためにショ糖密度勾配遠心による脳組織からのタンパク質画分調製方法を習得し、LC-MS/MSによるタンパク質群同時定量を行い、今後行う薬剤投与による影響やモデル間での種々のタンパク質発現の差異を解析する基盤を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度、当研究室において数種類の行動試験を行う実験設備・プロトコールを完成し、100種類以上の新規標的タンパク質の選定も行った。しかし、当初計画していたモデルマウスの表現型解析を行ったところ、統合失調症様の行動障害を報告したClapcote et al.,2007とは異なり、Shoji et al.,2012と同様の行動障害なしという結果を見出し、新たに別の動物モデルの検討を行っていたため、総合的には昨年度予定していた計画よりもやや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画していたDISC1遺伝子に点変異をもつマウスが統合失調症様行動を示さなかったため、昨年度から新たに使用している動物モデルであるフェンサイクリジン(PCP)投与動物において、抗精神病薬の慢性投与による行動障害への効果を検討する。PCPは慢性的にヒトが摂取すると統合失調症に類似した諸症状を示す、当研究室にて所有している麻薬であり、研究代表者は麻薬研究者の資格を有している。PCPを慢性投与されたげっ歯類も統合失調症様行動を示すことが知られている。また、薬剤慢性投与後のマウスから前頭葉、線条体、海馬等を採取し、ショ糖密度勾配遠心によって画分調製後、現時点で確立している標的タンパク質群同時定量系においてLC-MS/MS測定を行い、抗精神病薬投与前後、モデル間で発現量の変動を解析し、動物モデルが示す行動障害との関連を考察する。さらに、新規に選定した標的タンパク質をLC-MS/MSにより同定・定量するための定量用ペプチドを自前で合成する無細胞タンパク質合成を用いた実験系を当研究室にて導入し、本研究課題に活用できるように試みる。また、本研究が終了した後にも定量ペプチドの自前による合成系を発展的に使用可能な研究体制を整える。
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