2011 Fiscal Year Annual Research Report
腎疾患iPS細胞への応用のための腎構成細胞への分化誘導方法の確立
Project/Area Number |
23890203
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
森實 隆司 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (00468505)
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Keywords | 多能性幹細胞 / 胚性幹細胞 / 人工多能性幹細胞 / 腎臓 / 尿細管上皮細胞 / 再生 / KSP |
Research Abstract |
多能性幹細胞から腎構成細胞への分化誘導方法を確立すべく、マウスES細胞を用いて分化誘導方法を検討した。ActivinでマウスES細胞を分化誘導後、より腎臓に分化した細胞を純化するため、独自に作成したKSPに対するマウスモノクローナル抗体を使用した。マウスES細胞をActivinで18日間分化誘導後、独自に作成した抗KSPモノクローナル抗体を用いてFlow cytometryで細胞純化を行った。KSP陽性細胞は1.5%程度得られ、KSP陽性分画の細胞と、陰性分画の細胞を選別し細胞の特性を調べた。KSP陽性細胞の遺伝子発現プロファイルをマイクロアレイで解析しKSP陰性細胞と比較しながらgene ontology解析を行ったところ、KSP陽性細胞ではKSP陰性細胞と比較して有意に腎・泌尿器系の発生に関与する遺伝子が高発現であった。この遺伝子群は、Osrlなどの後腎間葉細胞で発現が認められ、尿細管上皮細胞に上皮化した後には発現が消失する間葉系細胞の遺伝子が複数含まれており、この事からES細胞由来のKSP陽性細胞は完全に分化した尿細管細胞ではなく尿細管上皮前駆細胞の特性を有していると考えられた。 このようにしてマウスES細胞から得られたKSP陽性細胞を、3次元培地で培養を行った。3次元培地には、各社から数種類発売されているため、それぞれを比較し最適な3次元培地を検討した。その結果Becton Dickinson社のMatrigelが細胞の生着率が良好であることが分かり、Matrigelを用いてKSP陽性細胞を分化誘導したが、管状構造は形成されなかった。そのため、基礎培地の検討を行ったところ、低血清培地で尿細管様の管状構造を形成した。この管状構造は、KSP陰性分画の細胞では形成されなかった。電子顕微鏡で構造を観察したところ、KSP陽性細胞が管状構造を呈し、微繊毛様の構造を有している事が分かった。これらの研究成果を、2011年11月のアメリカ腎臓学会で発表したところ、多発性嚢胞腎患者由来の疾患iPS細胞を樹立したハーバード大学のBonventre教授と共同研究を行う事となった。また、慶應大学として2011年9月に国内特許申請を行った。.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
マウスES細胞から、in vitroで尿細管管腔構造を再現する事に成功し、自身で作成予定であった多発性嚢胞腎患者由来の疾患iPS細胞を、ハーバード大学と協同研究という形で進めることとなったため。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトES細胞、iPS細胞に分化誘導方法を応用する。ヒトとマウスではもともとES細胞の未分化の維持機構が異なり誘導期間も異なるため、分化誘導方法もそれに合わせて調節する必要があるため、今まで使用してきたActivin以外の誘導因子を検討する必要がある。 また、マウスES細胞からin vitroで尿細管管腔構造を再現する事には成功したが、尿細管の各セグメントへ分化の確認や、各セグメントに特異的な分化誘導方法を検討する必要がある。
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