2011 Fiscal Year Annual Research Report
心不全患者のヘルスリテラシーを活用した自己管理向上プログラムの開発
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23890214
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
松岡 志帆 東京女子医科大学, 看護学部, 助教 (30609938)
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Keywords | 慢性心不全 / ヘルスリテラシー |
Research Abstract |
本研究の1年目は、Nutbeamのヘルスリテラシーの概念を用いて、わが国における心不全患者に対するヘルスリテラシー尺度の開発を試みた。まず、質問項目の選出においては、糖尿病患者を対象に作成されたIshikawaらのヘルスリテラシー尺度を参考に、心不全診療に従事する医療専門職を対象に質問紙調査を実施し、候補となる質問項目を収集した。その結果、16項目が尺度の質問項目の候補として挙げられた。さらに、心不全ケアを専門とする看護師により、心不全患者に特化した尺度を開発することを目的に、「心不全の病態、心不全治療、生活上の注意点に関する情報を収集、理解し、活用する能力。」という観点から、質問項目の洗練を実施した。その結果、15の質問が尺度項目の候補となった。 次に、尺度の信頼性、妥当性の検証を行った。循環器内科に通う外来心不全患者189名を調査対象とした。作成したヘルスリテラシー尺度に加えて、すでに信頼性、妥当性が検証されたLimited and marginal health literacy skill質問票、情報収集に対する意欲に対する質問、心不全に関する知識に関する質問紙を用いた調査を実施した。データ分析では、因子構造を明らかにするため、主因子法による因子分析を行い、最尤法、プロマックス回転による因子分析を行った。次に、信頼性を検討するため、Cronbachのα係数を算出した。また、再検査信頼性を検討するため、κ係数を算出した。さらに、構成概念妥当性 (Construct validity) を検討するために、3因子間の相関係数を算出した。続いて、Limited and marginal health literacy skillとの相関係数を算出した。これらの解析の結果、本研究で作成した尺度の信頼性と妥当性が検証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、初年度に、心不全患者を対象としたヘルスリテラシー尺度を作成し、信頼性と妥当性の検証をすることができた。本研究では、心不全診療やケアを専門とする専門家による質問項目の作成、洗練を行った上で、189名の患者を対象に信頼性、妥当性を検証することができ、臨床現場での活用が可能な精度の高い尺度開発が行えたものと考える。研究計画に従い、開発した尺度を用いた、ヘルスリテラシーのハイリスク集団の特定、セルフケア行動やQOLへの影響を検証する準備が整ったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目では、開発したヘルスリテラシー尺度を用いて、1)心不全患者におけるヘルスリテラシー低下のハイリスク集団の特定、2)ヘルスリテラシーがセルフケア行動に及ぼす影響、3)ヘルスリテラシーが、心不全患者のQOLに及ぼす影響について、検討を進める。1)については、年齢、性、経済状況などの患者特性、心不全の重症度や治療内容、抑うつ症状などが、ヘルスリテラシーにどのような影響を与えるかを検討する。2)については、ヨーロッパ心不全セルフケア質問票を用いて、心不全患者のセルフケアを評価するとともに、ヘルスリテラシーに及ぼす影響を検討する。3)QOLは、心不全患者に用いられるミネソタ心不全QOL質問票を用いて評価し、心不全患者のQOLとヘルスリテラシーとの関連について検討する予定である。
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