2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23890218
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
尾曲 大輔 日本大学, 歯学部, 専修研究員 (10608699)
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Keywords | 金属イオン / 癌 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
Niイオンを口腔扁平上皮癌由来の培養細胞HSC3に作用させることにより、HSC3が恒常的に分泌しているIL-8の産生を抑制することを実験的に確認した。そこでこの現象がHSC3特異的変化であるか否かを検証する目的で、この他の細胞株(HSC2、Ca9-22)を用いて同様の実験を行なったところ、程度の差はあるものの抑制効果が認められたことから細胞特異的な効果ではないことが解った。Niイオンの濃度と作用時間を様々に変えて行った実験から、その効果が濃度および時間依存的に増強することが解った。さらに、HSC3を抗TLR4抗体およびclass matched control抗体にて前培養し、Niイオンの存在下でさらに培養させた実験では、抗TLR4抗体を用いた系ではIL-8の産生は抑制されなかった。HSC3におけるIL-8の自発的産生はIL-8発現に極めて重要な役割を果たす転写因子NF-κBが恒常的に活性化しているためと考えられる。そこでNF-κKB特異的阻害剤を用い、HSC3におけるIL-8の分泌について検証したところ、IL-8の分泌が抑制され、HSC3のIL-8の自発的産生はNF-κKBの活性に起因していることが分かった。NiイオンがNF-κB活性にどのような影響を及ぼすかということに関してlucifbrase assayにより検索した結果、Niイオンは刺激の1時間後にNF-κBの活性を阻害することが判明した。これらの結果から、NiイオンがTLR4を介してNF-κB活性を阻害しIL-8の分泌を抑制する効果を持っていることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の基礎的研究により、Niイオンがヒト口腔扁平上皮癌細胞HSC3の恒常的に分泌しているIL-8の産生を抑制することを実験的に確認し、そのシグナル伝達のメカニズムの一部を解明した。以上のことから、おおむね実験計画通りであるため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の基礎的な研究によって、Niイオンが口腔扁平上皮癌由来の恒常的に分泌しているIL-8の産生を抑制することを実験的に確認した。この結果に基づき、Niイオンを口腔癌の治療薬として活用しうる可能性について、マウスに腫瘍細胞を接種させた実験モデルを用いて、生体内におけるNiイオンの腫瘍細胞の転移への影響を観察する予定である。
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