2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヨウ素反応剤を用いた選択的カップリング反応による官能基化芳香族化合物の合成
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23890229
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
伊藤 元気 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, ポストドクトラルフェロー (30610919)
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Keywords | 有機合成 / ヨウ素反応剤 / 環境調和 / メタルフリー / ビアリール / 酸化的カップリング / 天然物合成 / 機能性材料 |
Research Abstract |
申請者の所属する研究室では、持続可能な化学的手法の実現を目的として環境に優しい超原子価ヨウ素反応剤を用いる新規C-C、C-N、C-OおよびC-S結合形成反応の開発を行っている(J. Am. Chem. Soc., 1994, 116, 3684; Tetrahedron, 2001,57,345; Tetrahedron Lett., 2002,43,9241.)。近年ではその一環として医薬品や機能性材料開発に重要なビアリール化合物の開発に精力的に取り組んでおり、ごく最近、ヨウ素反応剤と基質の親和性を制御することにより、単純なアルキルアレーン類を基質として、これまで困難であった芳香族化合物同士の酸化的クロスカップリング反応が高選択的に進行することを見出した(Angew. Chem. int. Ed.,2008,47;1301.)。また、導電性材料の原料となり得るチオフェンやピロール類等のヘテロ芳香族化合物についても、安定なヨードニウム塩中間体を経る新規直接的手法によるクロスビアリール体合成法を報告している(J. Am. Chem. Soc., 2009,131,1668; Angew. Chem. Int. Ed., 2010,49,3334)。 昨年度は、上記のアルキルアレーン類の酸化的クロスカップリング反応を、フェニルエーテル類へと拡張することに成功した。(Org. Lett.,2011,13,6208.)フェニルエーテル類は、アルキルアレーン類に比べてホモカップリングや過剰酸化を起こしやすい基質であるが、ヨウ素反応剤の構造を最適化することによってそれらの副反応を起こすことなく反応が進行することを明らかにした。本手法によって、天然物によく見られる有用な酸素官能基を持つビアリール類を、金属を一切用いずに一段階で合成することが可能となった。また本手法は様々な官能基を持つ基質に適用することができ、その特徴を活かして実際に天然物由来の含窒素縮環型骨格を簡便に合成することにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
世界的に見ても先駆的な研究テーマである「メタルフリー酸化的クロスビアリールカップリング反応」の開発において、今後の有用化合物合成への展開の基礎となる重要な成果が多数得られ、Organic Letter誌(アメリカ化学会)に論文が掲載された他、4件め学会発表を行う等、研究が大いに進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は昨年度までに得られた成果を利用し、生物活性を持つ天然物等の合成を目指す。その際、光学活性な天然物合成を志向し、未開拓であった軸不斉ビアリール類の合成の検討やヨウ素反応剤独自の官能基選択性を利用した効率的合成法の開発を行う。ヨウ素反応剤では複数の中間体を利用することでそれぞれ異なる特徴が得られることが分かっているので、これらの中間体を使い分けることで、望みの化合物が得られるよう工夫する。
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