2011 Fiscal Year Annual Research Report
メダカを用いた筋原線維性ミオパチーの病因解明、および新規疾患モデルの作出
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23890256
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
大久 敬 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所・疾病研究第一部, 流動研究員 (90610840)
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Keywords | 筋原線維性ミオパチー / MFM / トランスジェニックメダカ / BAG3 |
Research Abstract |
本研究では、筋原線維性ミオパチー(MFM)の患者に認められた遺伝子変異が、実際にMFMの病態を引き起こしているか確認し、分子病態解明のためのモデル生物を確立することを目的とする。本年度は、メダカα-アクチンプロモーターの制御下で、骨格筋特異的に導入遺伝子を発現するトランスジェニックメダカの作成を試み、現在までに5遺伝子、13系統を樹立した。BAG3のP209Lの変異は、MFMを引き起こすことが報告されているが、この変異型遺伝子を導入したトランスジェニックメダカでは、筋線維内での変異型タンパク質やその他のZ線関連タンパク質の蓄積(封入体の形成)、および筋線維の萎縮を伴う径の大小不同、間質の著明な増加等、MFMで認められる筋病理像を呈した。我々の網羅的シーケンス解析から見出された新規変異p.261-265RAASPdelを有するBAG3を導入したトランスジェニックラインでも、同様の筋病理変化が認められた。さらに、これまでにMFMの原因遺伝子として報告されていないZ線関連遺伝子Aの導入個体についても、同様の筋病理変化が認められた。さらに、これらのメダカでは、体の屈曲、運動能の低下等、個体レベルでの表現型が認められた。また、導入遺伝子はEGFPとの融合型タンパク質として発現するため、細胞内での局在を共焦点顕微鏡下で、生きたまま観察することができる。得られたトランスジェニックメダカは、MFMの疾患モデルとして、病態解明に向けた詳細な解析、および小型で多産であるメダカの特長を活かし、運動能の回復や、細胞内での変異タンパク質の蓄積の緩和を指標として、MFMの治療に向けた分子スクリーニング等への応用が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メダカを用いたトランスジェネシスは、細胞内封入体の形成や、運動能の低下等、MFMの病態を再現できることが確かめられ、優れた疾患モデルになり得ることが実証された。既報の原因遺伝子における新規変異および、新規の原因候補遺伝子における変異の病原性も認めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
トランスジェニックラインの作成を試みた遺伝子のうちいくつかについては、正常型、変異型双方で、導入したタンパク質による細胞内封入体の形成が認められた。このような変異非依存的な凝集は、本来の生理的条件での発現量との乖離、およびEGFPの付加等が影響していると考えられる。この問題を解決するため、次年度は、テトラサイクリンによる発現誘導の系を用い、タグを付加しない本来の形の遺伝子を骨格筋で発現調節できるトランスジェニックラインを作成する。
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