2011 Fiscal Year Annual Research Report
歯牙のマイクロウェアに基づく初期の恐竜類の食性の推定
Project/Area Number |
23916006
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Research Institution | 福井県立恐竜博物館 |
Principal Investigator |
久保 泰 福井県立恐竜博物館, 主事
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Keywords | 古生物学 / 三畳紀主竜類 / 食性 |
Research Abstract |
1、目的と手法:本研究では恐竜類の共通祖先の食性の推定を目指した。恐竜の祖先は、従来は肉食と考えられていたが、近年発見された恐竜に最も近縁とされるシレサウルス類が草食と考えられる歯を持つことから、現在ではその食性は明らかではない。本研究では、(1)祖先状態推定による恐竜の共通祖先の食性の推定と、(2)恐竜類に最も近縁と考えられているシレサウルス類の歯に残った微細な傷(マイクロウェア)を用いたシレサウルスの食性の復元、を目指した。 2、祖先状態推定による成果:恐竜および恐竜に近縁な動物のうち、食性がわかるものを草食と肉食に二分し、これらの動物の系統関係を用いて恐竜の共通祖先の食性を推定した。その結果、最尤法を用いた方法では恐竜の共通祖先は草食である可能性が約6割、肉食である可能性が約4割であることがわかった。この結論は、恐竜の共通祖先が草食であった可能性が肉食であった可能性と同じ程度に高いこと、また用いた手法の制約で食性を単純に草食と肉食に二分せざるを得なかったことを考え合わせると恐竜の共通祖先が雑食であった可能性が非常に高いことを示している。 3、シレサウルスのマイクロウェアの研究による成果:ポーランドワルシャワ大学で研究されているシレサウルスの化石から樹脂を用いて歯の表面の微細な傷(マイクロウェア)の型取りを行った。同時にポーランドのオポレ大によるシレサウルスの産出地での発掘にも参加し、シレサウルスと同じ環境下で生活していた古脊椎動物に関する理解を深めた。日本に持ち帰った歯型を電子顕微鏡により観察した。歯の表面には摂食時についたと思われる100μm程度の細かな傷、(マイクロウェア)が残っていた。本研究により、シレサウルスのより詳細な食性を解明する道筋をつけられた。今後はマイクロウェアの形態を調べ、他の様々な食性の動物との比較を行う予定である。 4、本研究の成果や、調査時に撮影した写真は、博物館でのセミナーや、博物館の研究成果を発表する新聞記事に活用されており、一般の方の古生物や地学に対する興味を喚起する一助になっている。
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