2023 Fiscal Year Annual Research Report
Chronic Deflation: Causes, Consequences and Welfare Implications
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23H00046
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 努 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (90313444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 浩介 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (30263362)
上田 晃三 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (30708558)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 長期デフレ / インフレ予想 / 流動性の罠 / 価格支配力 / 非価格競争 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画に沿って研究を進め研究成果を論文や著作として公表することができた。具体的には、研究分担者の上田は市場の寡占度合いと価格粘着性の関係について実証的な研究を行ったほか、同じく分担者の青木は日本の企業の大規模データを用いて、価格マークアップと賃金マークダウンを計測し、それらの変化が日本の物価と賃金が上がらないことの主要因であることを明らかにし論文にまとめた。研究代表者の渡辺努は株価の変動を内生的なもの(例えば、市場内でのハーディング)と外生的なもの(例えば、市場の外から入ってくるニュース)に分離した上で、中央銀行の政策アナウンスメントが株価に与える影響について実証的な分析を行った。また、渡辺努は物価に関する研究成果を広く発信するために、啓蒙書として「日本の物価・資産価格」を出版した(清水千弘氏との共編著)。また、本研究を開始した2023年春以降、日本のインフレ率が急上昇しており、本研究の成果への社会の関心が当初の予想以上に高まっている。こうした中で本研究のメンバーはこれまでの研究成果を内外のコンファランス等で報告し、情報発信を行ってきたほか、理論・実証研究の成果が実際の政策形成に活用されることを企図して、研究成果の対外発信にも注力した。具体的には、日銀、内閣府、経団連、連合、国際機関等の主催する内外の会議において、日本におけるデフレからインフレへの変化の現状と今後の展望を説明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究を開始した2023年春以降、日本のインフレ率が急上昇しており、本研究の成果への社会の関心が当初の予想以上に高まっている。こうした中で本研究のメンバーはこれまでの研究成果を内外のコンファランス等で報告し、情報発信を行ってきたほか、理論・実証研究の成果が実際の政策形成に活用されることを企図して、研究成果の対外発信にも注力した。具体的には、日銀、内閣府、経団連、連合、国際機関等の主催する内外の会議において、日本におけるデフレからインフレへの変化の現状と今後の展望を説明した。さらに、新聞・雑誌等への寄稿、テレビ等での解説も積極的に行い、研究成果の発信に努めてきた。本研究の出発時点において、研究目的を、長期デフレの原因と経済厚生的な帰結を解明することと設定したが、それに対する社会のニーズが当初の予想以上に高まる中、今後も理論と実証の両面で研究成果を出し、社会に向けて発信していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度以降は、テーマ1「企業の価格設定と長期デフレの帰結・経済厚生に関する研究」、テーマ2「家計・企業のインフレ予想に関する研究」、テーマ3「インフレ予想の制御可能性に関する研究」、テーマ4「内外価格差に関する研究」の4つのテーマを軸に研究を推進する。研究の分担としては、渡辺は4つのテーマ全てに参画するとともに全体を統括する。青木は主としてテーマ1、テーマ2、テーマ3を担当する。上田は主としてテーマ1とテーマ2を担当する。具体的なトピックとしては、24年度は、原価の変動を価格に転嫁できる企業とできない企業の違いに関する研究、企業の人件費変動がその企業の価格に及ぼす影響に関する研究、寡占市場における企業の戦略的価格決定行動に関する理論・実証研究、CPIソースデータを用いた価格硬直性の計測とそれが経済厚生に及ぼす影響に関する理論・実証研究、企業が非価格競争(商品の小型化によるステルス値上げなど)に向かう理由とその帰結・経済厚生に関する理論・実証研究、政府の行うインデクセーション(年金、物価連動債など)の上昇・下落に関する非対称性の度合いとそれが経済に及ぼす影響に関する理論・実証研究、のそれぞれを推進する。
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Research Products
(18 results)