2023 Fiscal Year Annual Research Report
Chemical evolution of organic compounds and aqueous salts in carbonaceous asteroids
Project/Area Number |
23H00148
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
奈良岡 浩 九州大学, 理学研究院, 教授 (20198386)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱瀬 健司 九州大学, 薬学研究院, 教授 (10284522)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 小惑星 / 水溶性塩 / 有機化合物 / 立体異性体 / リュウグウ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では炭素質小惑星物質の水溶性成分を分析して、無機・有機イオンと有機分子の状態を詳細に明らかにし、始原的小惑星の塩水組成などの水圏環境と有機物の化学進化を解明を目指している。本年度は研究準備と分析法確立を主に炭素質隕石試料を用いて行った。数十mgの試料を用いて、有機化合物分析専用のクリーンルーム中において分析条件の検討を行った。また、イオンクロマトグラフ装置を新たに設置し、水溶性の無機・有機イオンの分析法を検討した。 1)テフロン容器や石英容器を用いて、水抽出を行うことにより、分析バックグラウンドを低減化することができた。 2)無機イオン種をマイクロカラムを使用した陽イオン・陰イオンのイオンクロマトグラフィー分離法を検討し、陽イオンでは Na+, Mg2+,NH4+など、陰イオンではCl-, SO42-, HSO3-, HS2O3-などを同定できた。 3)イオンクロマトグラフと超高分解能質量分析計を結合して、イオン化条件を検討した。小さな流速の溶離液では添加する補助有機溶媒が必要であり、陽イオンでは溶媒分子が多数付加したイオンが生成し、分子同定が難しいことが判明した。一方で、陰イオンでは化学進化において重要と考えられるイオウを含む新たなイオン性有機化合物を発見することができた。 4)異なる種類の有機化合物の光学異性体分離を2本のカラムを用いる2次元クロマトグラフィーにより行うことが可能となった。 5)炭素質小惑星物質および炭素質隕石について、含水鉱物量と水素同位体比の違いがグループ化され、それぞれ有機化合物分布とも関連していることが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
炭素質隕石試料を水抽出して得られる水溶性の陰イオンおよび陽イオン化合物を分析し、化学進化に重要と考えられる新たな有機化合物を発見できた。また、異なる種類の立体異性体化合物の同時分離する分析法も順調に進んだ。小惑星試料はまだ配布されていないが、研究目的を達成するための方法が概ね確立できたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
小惑星Bennuからのリターン試料が得られる予定なので、確立した手法を用いて水溶性イオン化合物を分析し、小惑星リュウグウ試料と比較する。また、炭素質隕石試料も複数分析して、炭素質小惑星と比較することによって、原始太陽系における化学進化を理解する。
|