2023 Fiscal Year Annual Research Report
低熱伝導と高強度を両立する鉄基ハーフホイスラー熱電材料のボンドエンジニアリング
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23H00230
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮崎 讓 東北大学, 工学研究科, 教授 (40261606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 慶 東北大学, 工学研究科, 准教授 (70360625)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 熱電変換 / ハーフホイスラー合金 / 格子熱伝導率 / 機械特性 / ボンドエンジニアリング |
Outline of Annual Research Achievements |
室温近傍における膨大な未利用排熱を有効利用可能な熱電発電技術に期待が高まっている。本研究では、研究代表者らのこれまでの先導的な研究を更に発展させ、化学結合における反結合性の寄与を考慮して機能発現を図るボンドエンジニアリングの学理を構築する。その指導原理に従って、高性能熱電材料に必須な発電出力に加え、従来考慮されずにいた高強度を具備した革新的発電モジュールを、鉄基ハーフホイスラー合金を対象として創出する。 本年度は、対象とすべき鉄基ハーフホイスラー合金系を明らかにするため、専用のワークステーションを備品として購入し、統合型第一原理計算・機械学習アルゴリズムの構築と候補物質の抽出を行った。200を超える組成の組み合わせから、個々の構造最適化を実施し、電子状態計算と輸送特性計算を行って、実現しうる熱電特性と機械的特性の相関を詳細に調べた。理想的な熱電材料は、その相関から外れた位置に存在するべきで、実際に3個程度の候補物質が見出された。また、それらの候補物質の合成を実際に試み、結晶構造解析および熱電特性評価を行った。鉄基ハーフホイスラー合金の多くは、単に熔融しただけでは得られない低温相が殆どであることから、適切なアニール条件を探索し、X線回折実験によって目的相の生成の可否を調べた。さらに予備的な熱電特性評価を行い、出力因子と熱伝導率のデータを取得した。また、一部の試料についてはビッカース硬度測定を行って機械的強度を評価し、第一原理計算による予測値と比較検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
統合型第一原理計算・機械学習アルゴリズムの構築と候補物質の抽出においては、任意の X-Fe-Z 元素から構成されるハーフホイスラー合金の第一原理計算・COHP解析を網羅的に行い、室温近傍で発現するゼーベック係数、導電率、格子熱伝導率等を導出した。また、得られる弾性定数からヤング率、剛性率、ポアソン比等を算出し、機械的強度や加工性を数値化した。これらの物理量の個々の計算には、使用法を精通している既存ソフトウェアを主に使用したが、ソフトウェア間でのデータ形式が異なっていたり、前処理が必要であるため、全必要データの抽出を半自動で実行可能な独自スクリプトを作成した。 抽出された候補物質に対して、多結晶または単結晶試料を合成した。試料合成は現有のアーク熔解装置やパルス通電加熱装置、浮遊帯域溶融装置を用いて行った。 得られた各試料に対して、X線結晶構造解析・微細組織観察・組成分析を行った。さらに熱電特性の温度変化を測定し、必要に応じてキャリア密度や移動度、磁気特性を評価した。機械的強度の予備測定としては、ビッカース硬度や音速を測定した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、候補物質の良質試料を合成するための条件を検討し、得られた試料の結晶構造と熱電特性の温度変化を測定する。さらには、電子状態計算によって適切な置換元素の抽出を行い、試料合成、結晶構造解析および熱電特性を進める。
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