2023 Fiscal Year Annual Research Report
Development of lightning forecast technology by using high-performance graphene electric-field sensors with single-V/m-level sensitivity
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23H00256
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
水田 博 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (90372458)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
郷右近 英臣 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (10757777)
赤堀 誠志 北陸先端科学技術大学院大学, ナノマテリアルテクノロジーセンター, 准教授 (50345667)
KAREEKUNNAN Afsal 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特任助教 (90910779)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 電界センサ / グラフェン / 可降水量 / 落雷予測 / 原子層材料 / リモートセンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
高電界感度グラフェンセンサ開発と性能評価においては、①単層グラフェンチャネル層の下側に単層hBN層を導入したセンサ素子と、②チャネル層を単層・多層MoS2原子層としたセンサ素子を設計・試作した。①の構造においては、グラフェンのみのチャネル構造に比べて数倍のキャリア移動度の向上、また②の構造においては、グラフェンに比べて一桁高い状態密度に起因した性能向上が期待される。①の構造を試作した結果、従来の単層グラフェンセンサ素子と比較して、電界感度が最大で約3倍に向上することを確認した。また、②の単層MoS2チャネル素子では、電界感度が単層グラフェンチャネル素子より一桁大きくなることを見出した。他方、多層MoS2チャネルの場合は、MoS2層数が増えるにつれ電界感度が減少する傾向が見られた。これは、MoS2層間抵抗のため、トップコンタクト電極から注入されたキャリアが主として最上層のMoS2層を走行するのに対し、外部電界によって基板界面のトラップ準位とキャリアを放出・捕獲するのは最下層のMoS2層であるため、両者の距離が大きくなるにつれ感度が低下するものと考えられる。さらに、センサの電界検出限界の高精度評価を目的として、超低電界下(< 100 V/m)でのロックイン計測の基礎検討を行った。 GNSSリモートセンシング可降水量(PWV)データとの統合的解析においては、日本国内全電子基準点における1分毎のPWV値を入手し、気象庁雷監視システムLIDENの発雷データとの相関に関する基礎検討を行った。特に、冬季雷が頻発する石川県の発雷データに注目し、R6年1月のPWV値およびその変化率と、発雷時間・場所の対応について詳細な解析を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【WP1:シングルV/m レベル高電界感度センサ開発と性能評価】では、当初計画していたグラフェンチャネル層下にフローティング・キャリアトラップ層を導入した素子構造を試作する前段階として、2種類のヘテロ原子層構造の素子を開発し、ヘテロ集積化プロセスの確立とともに、チャネルのキャリア移動度と状態密度が素子特性に及ぼす影響を解明するタスクを実施した。その結果、これらの材料特性が電界感度を3~10倍に向上させることを見出した。一方、超低電界領域での電界感度計測では、ロックイン計測による精度向上の反面、電流値のドリフトの問題が顕在化した。 【WP2:フィールドテスト(FT)による長期計測とAC/準DC 電界信号と発雷の相関解明】では、センサチップを実装する防水・防塵ケースの材質および内部構造によって、センサ特性に無視できない低下が生じることを見出した。そのため、当初は想定していなかった3次元DC/AC電界シミュレーションを導入し、センサチップ周辺の3次元電界分布を解析・設計するタスクを開始した。 【WP3:機械学習データ分析による落雷予測とGNSSリモートセンシング可降水量(PWV)データとの統合的解析】では、LIDENによる発雷データ(時刻、場所、発雷のタイプ)および雨雲レーダのデータを併用する工夫を行い、石川県海岸線沿いの電子基準点5ケ所におけるPWV値の局所性に対して一定の理解を得ることに成功した。これにより、PWV絶対値のみでなくその変化率(dPWV/dt)も大気の不安定性を議論する上で重要であることに気づいた。また、石川県で計測した冬季の発雷現象に対するグラフェン電界センサの時系列データと、PWV値データの相関について基礎検討を行った結果、間隔わずか15km程度で隣接する電子基準点間にも大きな差異が生じていることを見出した。これらはいずれも当初の計画を超える成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
【WP1:シングルV/m レベル高電界感度センサ開発と性能評価】では、Si/SiO2 基板上にフローティング・キャリアトラップ層を導入し、その上にhBNトンネル膜とセンサチャネル膜を積層した新型構造素子を試作する。キャリアトラップ層材料として、①密度を制御して点欠陥を導入した単層グラフェン、および②グラフェンより一桁状態密度の高い単層MoS2を検討する。また、作製したセンサ素子の超低電界下(< 100 V/m)における電界検出特性評価を目的として、高精度ロックイン計測を継続実施する。 【WP2:フィールドテスト(FT)による長期計測とAC/準DC 電界信号と発雷の相関解明】では、センサチップを実装する電界透過/防水・防塵ケースの設計において3次元DC/AC電界シミュレーションを実施し、ケースの材料と構造および、センサ素子の保護膜と接地条件を詳細に解析する。開発したセンサモジュールを屋外でのFTに適用し、同地点に設置したフィールドミル電界計のデータと比較分析を行う。FT計測データの分析においては、高速の電界変化(AC成分)と発雷事象の関係を詳細に解明する。雷発生時間と位置は気象庁雷監視システム(LIDEN)のデータを利用する。 【WP3:機械学習データ分析による落雷予測とGNSSリモートセンシング可降水量(PWV)データとの統合的解析】では、これまでにグラフェンセンサで観測した落雷前後の時系列データを、特異スペクトル分析SST法と再帰型ニューラルネットワーク(RNN)法で分析し、落雷発生予測の基盤技術を構築する。また、R5年度に試行した石川県における冬季雷に対するPWV値とLIDEN発雷データの相関解析を全国の電子基準点を対象に拡大する。特に太平洋側で夏季雷が頻発する地域に注目し、PWV値およびその変化率と、発雷時間・場所の対応について詳細な解析を行う。
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Research Products
(15 results)