2023 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of adipocyte-to-cancer-associated fibroblast conversion mechanism and establishment of strategies to control cancer microenvironment
Project/Area Number |
23H00410
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
佐谷 秀行 藤田医科大学, 腫瘍医学研究センター, センター長 (80264282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植野 さやか 岡山大学, 医学部, 客員研究員 (80848937)
信末 博行 藤田医科大学, 腫瘍医学研究センター, 講師 (90525685)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | がん関連線維芽細胞 / 腫瘍微小環境 / アクチン / MKL1 |
Outline of Annual Research Achievements |
卵巣がんや膵臓がんを始めとする多くの悪性腫瘍において、脂肪組織はがんの進展を促進する土壌(ニッチ)としての役割を担っていることが知られている。がん細胞は、脂肪細胞に作用して脱分化を誘導し、それによって放出される脂肪酸をがんの増殖及び転移のエネルギー源として利用するとともに、脱分化した脂肪細胞を腫瘍の生育を支援するがん関連線維芽細胞(CAF)へと分化転換する。しかしながら、がん細胞による脂肪細胞の脱分化とCAFへの転換を促進する分子メカニズムは未解明のままである。これまでに研究代表者らは、悪性度の高い骨肉腫細胞株AXTの培養上清(AXT-CM)を脂肪細胞に添加すると、脱分化さらにはCAF様細胞への分化転換が誘導され、そのプロセスにてアクチン動態によって制御される転写調節因子MKL1が活性化することを見出した。令和5年度では、AXT-CM、悪性度の低い骨肉腫細胞株AO由来の培養上清(AO-CM)あるいはコントロール培地で処理した脂肪細胞のマイクロアレイ解析を実施し、Gene set enrichment analysis (GSEA)により機能解析を行なった。その結果、AXT-CM処理した脂肪細胞(AXT-Ad)では、『脂肪分化』及び『脂肪酸代謝』に関連する遺伝子セットの発現が総じて減少し、脱脂肪化が誘導されていることが示唆された。一方、AXT-AdではCAFの分化に関連する『TGF-β及びTNF-αシグナル経路』に関連する遺伝子セット、さらにはMKL1下流の細胞骨格関連遺伝子の発現が有意に増加した。以上の結果から、悪性骨肉腫細胞により分泌される液性因子が、脂肪細胞でTGF-β及びTNF-αシグナル経路、さらにはMKL1を活性化させ、脱分化さらにはCAF転換を誘導することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
AXT-Adにてマイクロアレイ解析を実施し、脂肪分化や脂肪酸代謝といった遺伝子セットの発現が減少し、脱脂肪化が起こっていることを示した。また、AXT-AdではTGF-β及びTNF-αシグナル経路、MKL1下流の細胞骨格関連遺伝子といったCAFに関連する遺伝子セットの発現が増加し、脂肪細胞がCAFへと転換することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度において、悪性骨肉腫細胞により分泌される液性因子が、脂肪細胞の脱脂肪化を促し、CAFへと分化転換を誘導することを見出し、そのプロセスにおいてTGF-β及びTNF-αシグナル経路、さらにはMKL1を活性化することを明らかにしたので、CRISPR-Cas9 sgRNAライブラリーを用いたスクリーニングを実施し、上記シグナル経路を活性化しCAF転換を誘導するトリガー因子の同定を試みる。さらに、大網及び腸間膜へ転移した卵巣癌の臨床検体を用いて、卵巣癌周囲の脂肪細胞でTGF-β及びTNF-αシグナル経路、さらにはMKL1が活性化し、CAF様細胞へと転換するか否か、その可能性について追求する。
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Research Products
(2 results)