2023 Fiscal Year Annual Research Report
感染症の標的となる細胞内因子に対するバイオ医薬の創出・送達技術の開発
Project/Area Number |
23H00554
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
土居 信英 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (50327673)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津川 仁 東海大学, 医学部, 講師 (30468483)
岡田 光 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特任准教授 (50788916)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 蛋白質 / 核酸 / ウイルス / バイオテクノロジー / 共焦点顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)HBV感染細胞のcccDNAを完全駆除する核酸医薬の開発(土居・岡田) 肝細胞特異的に発現しているアシアロ糖タンパク質受容体(ASGR)に結合する小型抗体やASGRのリガンドであるtri-GalNAcと、ヒトSyncytin1やIZUMO1由来の様々な膜透過促進ペプチドを組み合わせて融合したAgo2タンパク質をキャリアとして、siRNA医薬を肝細胞選択的に効率よく細胞質送達できる全く新しいDDSを開発するために、蛍光タンパク質をモデルとして共焦点顕微鏡観察することで、コンストラクトの最適化を進めた。また、DOCK11以外の新たな標的を見い出すために、野生型とAAV8-HBV1.3mer慢性感染モデルマウスの肝組織を用いたシングルセルトランスクリプトーム解析を行い、HBV関連遺伝子と宿主側の遺伝子を区別して空間的な情報を得ることができた。 (2)クレブシエラ菌感染を阻害する小型抗体医薬の開発(土居・津川) Axlの細胞内ドメイン(ICD)の様々な部位に結合する多様な小型抗体を1次セレクションし、その中から、所望の経路のみを活性化する小型抗体の2次スクリーニングを行うために、1年目は、Axl(ICD)の部分断片にビーズ固定用のタグを融合した遺伝子の発現用プラスミドを構築し、大量発現・精製した。Axl(ICD)断片が非天然変性領域を含むため苦労したが、ビーズへの固定を確認することができた。また、クレブシエラ菌感染下におけるAxl/Gas6シグナルの亢進がTight-junctionの増強と同時に腸管上皮細胞における細胞増殖も増強することをin vitro感染モデル試験にてki67染色を指標に明らかにした。このin vitroモデルを小型抗体の2次スクリーニングに利用することで、細胞増殖の誘導を引き起こさない医薬品の開発が可能になると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ASGRに結合する小型抗体やASGRのリガンドである tri-GalNAc と、ヒト Syncytin1 や IZUMO1 由来の様々な膜透過促進ペプチドを組み合わせて融合したタンパク質の肝細胞選択的な取り込みを確認できたこと、また、Axl(ICD) の各部位に結合する多様な小型抗体のセレクションに必要となるAxl(ICD) の部分断片を調製できたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1) HBV感染細胞のcccDNAを完全駆除する核酸医薬の開発(土居・岡田) 前年度に引き続き、Ago2融合タンパク質とsiRNAの複合体をヒト培養細胞に添加し、肝細胞選択的に細胞内に送達されることを共焦点顕微鏡観察により確認することで、コンストラクトの最適化を進める。また、複合体が細胞質で標的mRNAを分解していることを確認するために、ヒト培養細胞の内在遺伝子やDOCK11に対するsiRNAとの複合体を肝細胞由来の培養細胞に送達し、培養細胞から抽出した標的遺伝子に対するmRNA量をRT-qPCRで定量する。さらに、前年度のHBV複製に関わる遺伝子情報の包括的解析から、核酸創薬に適した標的細胞から数種類の標的遺伝子まで絞り込み、先行したDOCK11の研究基盤データと比較して、新たな核酸創薬に最適な標的遺伝子を同定する。 (2) クレブシエラ菌感染を阻害する小型抗体医薬の開発(土居・津川) mRNAディスプレイ法により、すでに構築済みのヒト単一ドメイン抗体ライブラリーから、前年度に調製したAxl(ICD)に結合する小型抗体を試験管内選択する。その後、1次セレクションで得られた小型抗体を腸管上皮細胞由来 Caco-2細胞で発現させることでTight-junctionタンパク質の発現が変化するクローンを2次スクリーニングする。このときTight-junctionタンパク質のプロモーター細胞の構築と合わせて、クレブシエラ菌感染下におけるAxl/Gas6シグナルを確認し、クレブシエラ感染症予防に最適な2次スクリーニング技術を確立し利用する。
|