2023 Fiscal Year Annual Research Report
アイヌ民族の格差問題の実践的研究:米国経済教育の先住民族の取扱いを手がかりに
Project/Area Number |
23H04998
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Research Institution | 北海道津別高等学校 |
Principal Investigator |
山崎 辰也 北海道津別高等学校, 高等学校教頭
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 米国経済教育 / 先住権 / アイヌコタン |
Outline of Annual Research Achievements |
米国経済教育で先住民族の問題は、歴史で経済を学ぶアプローチとして作成されたCouncil for Economic Educationの高校向け教材“Focus: Understanding Economics in U.S. History”の中で取扱われている。米国の西部開拓期の政策はお雇い外国人の助言を受け、明治期の北海道開拓政策に大きな影響を及ぼしている。アイヌ格差問題の源泉は、先住権を蔑ろにした明治期の政策にある。米国経済教育では先住権の概要を財産権の学習や先住民族との交易の学習を通して理解できるように取扱っているのが特徴である。 (1)財産権の学習から分かること 北海道の開拓を進めるに当たり明治政府は、お雇い外国人のケプロンの示したホームステッド法の条件(インディアンから連邦政府が土地を買い取る)を、アイヌとの関係においては無視し多くの和人入植を促した。この「米国連邦政府―インディアン」の関係と「明治政府―アイヌ」の関係を比較したとき、明治政府が条約を締結せずに、コタンの有する主権や先住権をコタンの意思にかかわらずに奪った。また北海道旧土人保護法はドーズ法をモデルにしたものとされるが、ドーズ法ではインディアンの土地を買い取ったことに対し、北海道旧土人保護法ではアイヌの土地を取り上げ、政府の恩恵として給与した点で大きく異なるものとなっている。 (2)先住民族との交易の学習から分かること 米国との比較から考えると、集団の権利としての漁業権や狩猟権は、文化伝承や民族文化の享有のために認められる権利ではなく、先住権として認められるものとなる。しかし、現在の日本政府のアイヌに対する基本姿勢は、今や先住権を有するアイヌの集団は存在しないというものである。しかしながら歴史を見ると、コタンを破壊したのは当時の明治政府であり、自ら壊したものは自ら復元する義務を孕んでいることが理解できる。
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Remarks |
2023年 経済教育学会 学会賞(教育実践部門)受賞
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