2023 Fiscal Year Annual Research Report
科学的生物概念の形成を到達目標に据えたカリキュラムモデルの設計と検証
Project/Area Number |
23H05059
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
名倉 昌巳 奈良教育大学, 理科教育講座, 特任准教授
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生物の共通性 / 科学的生物概念 / 生物学上の誤概念 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際数学・理科教育動向調査(TIMSS 2019)の結果において,「生物と無生物」を区別する出題の正答率が,国際平均より低いことが指摘された。生物概念に関する出題への正答率が低いことは以前から指摘されていたが,再びこのような結果が出てくることから,TIMSSが求めている生物概念の育成につながりにくい何らかの要因が,我が国の教育課程に潜む可能性を示唆する報告がある。ふつう生物の共通性は細胞・代謝・複製(複製エラーにより進化が起こる)の3点であり,生物の共通性と多様性の理解を促すキーワードは進化にある。すなわち,「生命(を柱とする)」領域を進化でつなぐカリキュラム開発によって,科学的生物概念の育成に繋がると考えた。 そこで本研究では,生物の共通性と多様性を中心とした科学的生物概念の形成や,生物学上の誤概念の払拭に資するカリキュラムを開発し,その有効性を検証することを目的とした。さらに,我が国の学習指導要領をはじめとした生物教育におけるカリキュラム構成を再検討することをめざした。 研究方法は,主に中学校理科の「生命」領域を対象に,生物の共通性を到達目標に据えた評価中心のカリキュラムを設計し,その評価結果の質的分析や質問紙調査による統計的分析によってその有効性を実証した。加えて,科学的生物概念の形成を支援する有効な内容構成に関する検討も行った。 研究の成果としては,中学校第1学年「生命」領域と,同「地球」領域におけるパフォーマンス評価を中心とした2つのカリキュラムを通した「概念枠組み」による質的分析から,生物学上の誤概念を払拭する手立てが示唆された。その成果を令和5年9月の日本科学教育学会第47回年会において発表した。さらに,この2領域にわたる継続的な質問紙調査による多重比較から明らかになったカリキュラム編成上の知見を,令和5年12月の日本理科教育学会近畿支部大会において発表した。
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