2023 Fiscal Year Annual Research Report
全盲児の平面筆記学習を支援するピン式表面作図器の開発と全国普及
Project/Area Number |
23H05111
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
須惠 耕二 熊本大学, 技術部, 技術専門職員
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 視覚障害 / 教材 / 触察 |
Outline of Annual Research Achievements |
盲学校では,図形等を描かせる触察用教材にレーズライターがあるが,専用フィルムは使い捨てで値段も高く,知育上重要な「好きなだけ自由に描く」体験を提供できない.そこで,鉄製ピンを磁石ペンで吸い上げて触読でき,ピンを戻して何度でも描けるピン式平面作図器「ぴん作」を開発して合計8校の盲学校に提供した. ぴん作は,A4サイズのシナベニヤにφ2.2の穴を3.5mm間隔で約3,250個あけてφ2のピンを差したもので,φ1.7で穿孔した薄いシリコンマットを2枚のシナベニヤの間に挟んでいる.マット穴とピンの直径差によるシリコンの弾力でピンが上下動した位置に留まる.穿孔にはレーザ加工機を用いた.磁石ペンは,磁石付伸縮棒の磁石部分を切り離して糸で結ぶ吊下げ式とした.寝かせ気味に毛筆の動作で描くと磁石が通過時にピンを吸い上げていく仕組みである. 開発段階では試行錯誤を重ねた.アクリル板で試作したところ,レーザ穿孔による熱で板材が反った.反りを押さえる治具を作ったり板を厚くしたり等を試みたが改善できず,最終的に多層構造のシナベニヤ材を採用した.磁石ペンもピンを吸い上げるにはペン先を浮かせて持つ必要があった.そこで、磁石が常にピンに対して一定角度と3mmの吸出し空間を保つように考案したのが磁石吊下げ式である. 完成したぴん作を2月に「視覚障害教育実践研究会」で展示公開したところ,盲学校関係者から「これは面白い!」「触ってはっきり読める」などの好評価が相次ぎ,開場わずか15分で持参した6台の無償提供が完了した. 導入希望調査は,全国盲学校長会を通じWebアンケートを3月末より実施中である.回答校の8割以上が導入を希望する等,新教材への高い期待が寄せられている.ピン先端を半球状に丸めた改良型での製作寄贈事業で令和6年度に助成金採択を受けたので,本成果を全国66の盲学校に1台ずつ贈る全国普及が実現する予定である.
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