2023 Fiscal Year Annual Research Report
イヌ悪性腫瘍に対するがんウイルス療法の前臨床試験に向けた予備的研究
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23H05238
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
福田(園田) 絵観子 兵庫医科大学, 医学部, 実験補助
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | がんウイルス療法 / イヌ / 遺伝子治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者の所属研究室では、がん細胞特異的に感染および増殖する増殖型レトロウイルスベクター(RRV)を用いたがんウイルス療法研究開発を行なっており、これまでに多くのヒトがん細胞を用いた担がんマウスモデルにおいて優れた治療効果を示してきた。またイヌの細胞においても、RRVは正常細胞を傷害することなく、効率よくがん細胞に感染伝播し殺細胞効果を示すことが確認された(奨励研究21H04145)。さらにイヌのがん細胞を接種したマウスモデルを作製し、RRVは腫瘍全体に感染伝播し、明確な治療効果を示すことを明らかにした(奨励研究22H04265)。 以上を踏まえ本申請研究では、RRVの効果ががん種によらず普遍的であることを確かめるため、より多くのイヌがん細胞種を用いてRRVの感染伝播効率および殺細胞効果について検討した。肺がん、乳がん、尿路上皮がん、さらに罹患したイヌから細胞クローンを樹立した上顎がん2種、扁桃がん2種についてRRVの感染伝播効率を評価したところ、いずれの細胞においてもRRVは効率よく感染伝播することを明らかにした。また、肺がん、乳がん、尿路上皮がん、上顎がん、扁桃がんにおいて、自殺遺伝子シトシン脱アミノ化酵素を発現するRRVを感染させ、薬物前駆体添加後の殺細胞効果を検討したところ、RRVの感染伝播効率および薬物前駆体の濃度に応じた殺細胞効果を示した。最後に肝がん細胞を皮下接種したマウスモデルを用いた治療実験を行い、その結果線維肉腫のみならず肝がんにおいてもRRV群は強力な抗腫瘍効果を示すことを明らかにした。 これらの結果からRRVを用いたがんウイルス療法はヒトのみならずイヌのがん治療においても有効であることが明らかとなり、獣医学分野においても真価を発揮することが期待される。
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