2023 Fiscal Year Annual Research Report
薬物トランスポータを標的としたオキサリプラチン誘発末梢神経障害の予防薬の開発
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23H05316
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小林 暉英 大阪大学, 医学部附属病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オキサリプラチン / 末梢神経障害 / プロトンポンプ阻害薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
オキサリプラチン(L-OHP)による化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)は高頻度で発現し、身体的苦痛から患者のQOLを著しく低下させ、臨床上大きな問題となっている。L-OHPによるCIPNに対する有効な予防法は未だ不十分な状況であり、有効かつ安全なCIPNの予防法の確立は喫緊の課題である。L-OHPのCIPN発症には、有機カチオントランスポータ2(OCT2)やカルニチン/有機カチオントランスポータ1(OCTN1)による後根神経節(DRG)へのL-OHPの蓄積が関与すると報告されており、OCT2またはOCTN1阻害作用を有する薬物は、L-OHPのCIPNに対する予防薬となる可能性がある。本研究では、後方視的調査および医薬品副作用報告データベース(JADER)解析から、プロトンポンプ阻害薬(PPI)がL-OHP誘発性CIPNを軽減できる可能性を見出した。 ヒトOCT2安定発現HEK293細胞(HEK-hOCT2細胞)及びヒトOCTN1安定発現HEK293細胞(HEK-hOCTN1細胞)を用い、hOCT2及びhOCTN1に対するPPIの阻害効果を評価した。PPIの一種であるランソプラゾール(LPZ)は、hOCTN1に対する阻害効果は認められなかったが、hOCT2に対して、LPZの濃度依存的な阻害効果が認められた。さらに、HEK-hOCT2細胞及び空ベクター導入細胞(HEK-vector細胞)を用いL-OHP曝露による細胞生存率に対するPPIの保護効果を評価したところ、L-OHPの細胞毒性に対する保護効果が認められた。以上より、PPIはOCT2を阻害して、L-OHPによる細胞毒性に対して保護効果を示すことにより、L-OHP誘発CIPNを抑制することが示唆された。
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