2023 Fiscal Year Annual Research Report
Social scientific research using large-scale surveys to understand and resolve social disparities, inequalities, and divisions
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23H05402
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤原 翔 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (60609676)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永吉 希久子 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (50609782)
有田 伸 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (30345061)
香川 めい 大東文化大学, 社会学部, 准教授 (00514176)
中澤 渉 立教大学, 社会学部, 教授 (00403311)
長松 奈美江 関西学院大学, 社会学部, 教授 (30506316)
瀧川 裕貴 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (60456340)
保田 時男 関西大学, 社会学部, 教授 (70388388)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2030-03-31
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Keywords | 社会階層・社会移動 / 格差・不平等 / SSM調査 / ウェブ調査 / 外国籍住民 / 自動コーディング / 機械学習 / 因果推論 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施計画に基づき,次の8つの課題を実施した.(1)2025年より開始するSSM調査の実施に向けた体制づくりや調査の準備を行った.研究メンバーは156名(院生・ポスドクメンバーは49名)となった.全体ミーティングを9月と1月に行い,2025年の調査に向けてのテーマや課題の共有,プレ調査の検討を行った.また,(2)若手研究者を中心とした2015年までのデータを用いた研究会を開催し計16名(うち院生13名)が参加した.5回の研究会の後,3名のコメンテータを招き,成果報告会を行った.(3)国内の学会等での報告を計36件,(4)国際学会等での報告を計20件行った.国際学会では,海外の研究者に今後のプロジェクトへの説明を行うことで,特にアジアでの国際比較の可能性を開き,情報交換や共同研究のためのネットワーク作りを行った.(5)プレ調査としては従来のSSM調査の方法を踏襲しつつもオンライン面接調査を取り入れた(A)訪問面接・留置調査,(B)20歳から39歳を対象とした若年調査,(C)特定地域の生活に注目した地域調査,(D)外国籍住民を対象とした外国籍住民調査,(E)ビッグデータを活用するためのアプリ調査を行った.紙の調査票だけではなくQualtricsを用いたWeb調査システムを構築し,オンラインでの回答を可能とした.プレ調査における回収率は十分に高いとはいえず,2025年1月からの本調査に向けた課題や改善点が明らかになった.(6)これら調査を行う上で,対象者へのプロジェクトの詳細な説明を行うために調査対象者の利便性を重視したホームページを作成した.(7)最先端の大規模言語モデルを採用した自動コーディングシステムを開発して性能を向上させ,ウェブ調査システムに導入し,新しい時代における社会調査のインフラ構築の準備を進めた.(8)プレ調査の回収率についての基礎分析を行い,結果をまとめた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトの進捗は当初の計画以上に進展している.まず,150名を超える研究メンバーが集まり,そこには社会学以外の研究者も多く加わることになり,多様な視点からの格差・不平等へのアプローチや社会調査のインフラ構築が可能となった.50名近くの大学院生が参加し,若手中心の研究会や成果報告会を開催することで,若手研究者がSSM調査データを積極的に活用するようになった.海外の研究者,調査会社,システム開発会社,行政機関関係者と研究打ち合わせを行うことによって,2025年の本調査の準備を予定以上に進めることができた.特に,毎月,大規模言語モデルを活用した職業の自動コーディングシステムの開発打ち合わせを行うことで,精度の高い自動コーディングシステムの開発が完了し,Web調査での実装も完了した.これによってコーディングにかかる時間を大幅に短縮し,本プロジェクトの目的でもある調査データの早期利用やオープンサイエンス化のための公開が可能となる.調査会社との打ち合わせを経て,回収率低下に対応したオンライン面接調査を企画し,実際に本調査と同様の条件でテストできたことも,本調査に向けての準備を十分に進められただけではなく,新しい社会調査手法の発展にも寄与したといえる.まだ本プロジェクトで独自に得た調査データはなかったが,これまで得られたデータの二次分析から,今後の調査の土台となる多くの研究業績を発表できた.国際学会(Association for Asian Studies)では,セッションを企画し,日本社会における追跡困難な集団についての格差・不平等に関する研究報告を行った.以上のように,研究組織構築,国際的なネットワークの構築と研究成果の発信,社会調査のインフラの整備など,当初の計画を上回る進展があったといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に行ったプレ調査のデータを整備し,それを用いた分析を行う.特にどういった集団で回収率が低かったのかを統計的に分析する.回収率の分析については,調査会社の調査員のヒアリング結果も参考にして,回収率向上の方策を検討する.特に,訪問・面接調査,外国籍住民調査,アプリ調査については回収率がまだ十分高くはないので,調査会社と協力して高品質なデータの収集方法について検討する.また,同時に,プレ調査のデータから格差・不平等や社会的分断についての分析を行う.SSM調査の核となる職業についてはほぼ開発が終了した自動コーディングシステムを活用することでコーディングを早期に終了させるとともに,SSM職業分類の修正を試みる.そしてデータ分析の結果をふまえて,本調査の調査票を完成させる.さらにワークショップを定期的に開催することで,社会調査データ分析の最先端の動向についてメンバーで共有する.またこれまでの調査データの分析から,研究成果の国内および海外での発表を行い,論文を執筆する.特に2025年の調査データについての格差と介入に関する理論的検討及びそれに対する因果推論と機械学習の手法の適用についての研究を重点的に進める.このように,2023年度のプレ調査の結果を踏まえたうえで,2025年1月からはじまる本調査に向けた準備を行う.生活スタイルの多様化や新型コロナウイルスの影響などもあり回収率が低くなる可能性が考えられるが,調査会社および研究者調査員との情報交換を密に行い,不測の事態が生じた場合にも被害を最小限に抑える調査実施体制を整える.
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Research Products
(84 results)