2023 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of Artificial Nucleic Acids with Highly Active Catalytic Target RNA Cleavage Ability and Development as a Therapeutic Platform
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23H05465
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
和田 健彦 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (20220957)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
児玉 栄一 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (50271151)
稲垣 雅仁 名古屋大学, 理学研究科, 研究員 (60881092)
林 宏典 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (00752916)
荒木 保幸 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (80361179)
西嶋 政樹 和歌山工業高等専門学校, 総合教育科, 講師 (70448017)
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Project Period (FY) |
2023-04-12 – 2028-03-31
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Keywords | 核酸医薬 / 触媒的切断 / RNase H / 薬効向上 / オフターゲット効果低減 / 切断機構解明 / 基盤技術 / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、我々が開発した高活性触媒的標的RNA切断機能付与型人工核酸(キメラ人工核酸: CANA)を活用し、COVID-19をモデルとし新興・再興感染症や癌など対する新たな治療薬基盤構築を目指している。 具体的には次世代の分子標的薬モダリティーとして期待されている核酸医薬の実用化に向けた深刻な解決課題である、極少ない細胞内導入量に起因する低い治療効果の向上に向け、CANAの機能発現機構解明と機能向上に資する配列・構造設計指針構築に資する基礎的データ取得研究に取組み、その知見に基づきCOVID-19の病因ウイルスであるSARS-CoV-2ゲノムRNAを標的とした直接的切断による感染・増殖抑制による治療薬への展開を計画している。令和5年度はCANA戦略の鍵となる、1.CANA・RNA二重鎖複合体形成・解離過程の解析に取り組み、熱力学パラメータを算出し、物理化学的解析に成功した。また2.CANA・RNA二重鎖とRNase H複合体のCryoEMによる構造解析に取組み、基本技術の習得と、構造解析に供するヒト型RNase Hの大量合成法の構築に取組んだ、加えてSARS-CoV-2の感染・増殖抑制に資する標的候補ゲノムRNAに対するCANAの設計・合成にも取組み、8種類のCANAを合成し各種in vitro実験による標的RNAとの複合体特性解析に成功し、細胞試験、そして健全マウス気管投与による安全性試験を検討し、重要なデータを取得した。並行して今後の研究推進の礎となるキメラ人工核酸の高効率かつ大量合成法の確立にも取組み、市販されていないCANA用Fmoc-PNAモノマー合成法の最適化と外部委託により大量合成し、本科研費によりペプチド自動合成機を購入し、DNA部位とのカップリング合成条件の最適化によりmgスケール合成を可能とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和5年度の研究により、キメラ人工核酸の合理的設計に向けた標的RNAとの二重鎖複合体形成・解離過程の物理化学的解析に取り組み、熱力学パラメータの算出によるCANAの合理的設計に資する初期的データ取得に成功し、この設計指針に基づき新規CANAの合理的設計と得られたCANAの特性解析からその有効性確認に成功した。さらにミスマッチとダブルミスマッチ塩基を導入した標的類似配列RNAとのCANA二重鎖複合体の安定性を比較検討し詳細に検討した結果、ミスマッチ塩基の複合体安定性に及ぼす影響を詳細に検討し、DNA部位、PNA部位のみならず、従来標的塩基配列認識性が解明されていなかったジャンクション部位においてもミスマッチ塩基により安定性の大きな低下(シングルミスマッチで5―8度、ダブルミスマッチでは15度-27度)が観測され、正確に塩基配列を認識していることが明らかとなった。これらデータは今後の研究推進の鍵となる重要な基礎的データであり、当初は計画していなかった予想以上の研究進展と判断される。 一方、治療薬としての展開研究に関しては、COVID-19感染モデル細胞試験において良好な感染・増殖抑制効果を示したキメラ人工核酸を用い、健全マウス気管投与による安全性試験に取り組み、未投与の対照群と比較して行動・体重などに差異が観測されず、また解剖による臓器所見においても気管支・肺胞に変化は観測されず、キメラ人工核酸のマウス試験による安全性確認に成功した。 このように当初の研究計画では想定していなかった合理的設計指針構築に有益な初期的データ取得とその有効性実証に成功し、さらにマウス試験による安全性確認という極めて有益な知見取得に成功したことから、当初計画以上に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では我々が初期的知見を取得した「高活性触媒的標的RNA切断機能付与型人工核酸(キメラ人工核酸):CANA」の位置選択的標的RNA切断メカニズムや触媒回転数増加機構に対する物理化学的検討、そして複合体構造や機能解明に基づく基礎的研究を推進し、高活性触媒的標的RNA切断機能が一般性と普遍性を有することを構造化学と生物学的活性評価など種々の解析手法を用い相関解明を目指している。 令和5年度の研究により、1.CANA・RNA二重鎖複合体形成・解離過程のUV融解曲線のフィッティングにより初期的ではあるが熱力学パラメータの算出と初期的合理的設計指針の構築に成功したが、本年度はカーブフィッティング法により得られたパラメーターの信頼性について、より信頼性の高いITCと温度変化SPR装置を用い詳細に検討する。また 2.CANA・RNA二重鎖とRNase H複合体の解明に関しては、令和5年度の続きCryoEMによる解析研究を推進する。具体的には遺伝子工学手法を用いヒト型RNase Hの効率的合成条件の最適化を検討し、CANA・RNA二重鎖との複合体形成とCryoEM用スライスサンプル作成に取組む。並行して市販の大腸菌型RNase Hとの複合体形成とスライスサンプル作成も検討する。 治療薬としての展開研究に関しては、令和5年度の研究により得られたSARS-CoV-2のゲノムRNAの治療標的候補配列に対する複数種類のCANAを合理的に設計し、令和5年度に構築したDNA自動合成機とペプチド自動合成機を活用した高効率合成法により合成し、各種in vitro実験により標的RNAとの二重鎖複合体の特性解析を行い、これらデータを活用しCOVID-19感染モデル細胞系でSARS-CoV-2感染・増殖抑制効果を指標として機能評価を進め、COVID-19治療薬として配列と構造最適化に取り組む。
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Research Products
(21 results)