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2023 Fiscal Year Research-status Report

Construction and development of a bioethical framework based on the concept of duty in the context of prenatal testing

Research Project

Project/Area Number 23K00024
Research InstitutionTohoku University

Principal Investigator

圓増 文  東北大学, 医学系研究科, 講師 (60756724)

Project Period (FY) 2023-04-01 – 2027-03-31
Keywords出生前検査 / NIPT / 選択的中絶 / 自律 / 責任 / 義務 / 優生学
Outline of Annual Research Achievements

本研究は、出生前検査および選択的中絶にまつわる倫理的課題を分析・検討するための理論枠組みとして、自律概念の限界を指摘した上で、義務、責務、責任概念に着目して、これら概念に依拠した議論の体系化を目指している。本年度は、リベラル優生学における「国家中立性」の概念に着目し、この概念をめぐるリベラル優生学の議論を吟味を行った。さらにそれを通じて、日本の出生前検査とその情報の提供における政府の中立性の妥当性について検討を行った。その結果、以下のことが明らかになった。
1)日本の文脈で言及される政府の中立性は一見するとリベラル優生学における「国家中立性」の概念と近い考え方であるが、他方、中絶を女性の自己決定として擁護する一方、選択的中絶に関する自己決定権を明確に認めていないという点で決定的な違いがあること。
2)日本の自律に関する議論はリベラル優生学における議論に比べると、女性の自由・自己決定の「権利としての自律」よりも、自律行使に伴う女性の「責任」の側面を強調する傾向が強いこと。
3)リベラル優生学をめぐる議論を踏まえるなら、政府の中立性は少なくとも2つの異なる意味で理解できるが、そのいずれの意味での中立性も、NIPTの技術が普及した現代社会においては、不可能もしくは困難であること。
4)自己決定としての自律は、過去の優生学への反省を踏まえるなら、生殖の文脈において重要な価値規範であるものの、近年、アジア圏では、「関係依存的自律relational autonomy」の考え方の下で、女性の決定に関する家族の介入が肯定的に論じられる傾向がみられること。他方、少なくとも現在の日本社会においては、家族関係の多様化や家族間の格差拡大が進展しており、その点で、家族関係に注目した理解の下での「関係依存的自律」に依拠した議論に対しては、今後慎重な検討が必要であること。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

上記の研究成果を現在論文にまとめて国際学術誌に投稿中である。この点で、おおむね順調に進展していると判断した。

Strategy for Future Research Activity

下記三つの作業の実施を計画している。
1)前年度は「政府の中立性」に着目したが、今後は「医療専門職の中立性」に着目し、文献研究を通じて、その意味と含意を明確化すると共に、実臨床において中立性が実践された場合の理論上・実践上の課題を整理する。
2)アジア圏の生命倫理において近年注目されている「関係依存的自律relational autonomy」をめぐる議論を整理し、解釈の妥当性および概念そのもの(つまり多様な解釈に依拠しない概念自体)の理論的課題について、文献研究を通じて検討を行う。
3)アジア圏での出生前検査および障害者観について調査を行っている研究者を招聘し国際セミナーを開催し、意見交換を通じて「関係依存的自律relational autonomy」が出生前検査の文脈において、特に国際的な文脈においてどこまで妥当性をもつかを検討する。

Causes of Carryover

次年度使用額が生じた第一の理由として、当該年度(令和5年度)の予算に論文採択時に雑誌社に支払うオープンアクセス料を計上していたが、査読および再投稿のプロセスの遅れにより、支払いが次年度(令和6年度)以降になることが予測されるという理由が挙げられる。さらに研究計画当初より、次年度(令和6年度)において海外(豪州Monash大学)より研究者を招聘し国際セミナーを開催する計画を立て準備してきたが、世界的な物価高騰および円安の影響により当初計画していた金額では不足することが令和5年度中に見込まれた。そのため、翌年度分の予算を確保するため、当該年度(令和5年度)中の研究計画に変更を加えたこと(論文投稿先の変更・出張日数の変更)がもう一つの理由である。今後の計画としては、次年度(令和6年度)に国際セミナーを開催すると共に、研究成果発表(論文投稿や国内外の会議での発表)を計画しており、そのために助成金を使用する。

  • Research Products

    (1 results)

All 2024

All Journal Article (1 results) (of which Open Access: 1 results)

  • [Journal Article] 書評 児玉聡『予防の倫理学』2024

    • Author(s)
      圓増 文
    • Journal Title

      豊田工業大学ディスカッション・ペーパー

      Volume: 31 Pages: 13-23

    • DOI

      10.60327/ttidiscussionpaper.31.0_13

    • Open Access

URL: 

Published: 2024-12-25  

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