2023 Fiscal Year Research-status Report
Seeking an integral theory of blame and forgiveness: an inquiry to construct a relation-based theory of forgiveness
Project/Area Number |
23K00027
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
佐々木 拓 金沢大学, 人文学系, 教授 (70723386)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | ゆるしの関係修正説 / 関係に基づくゆるしの理論 / 非難の哲学 / ゆるしの哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の第一の目標は、多元的・複合的視点からゆるしの概念を分析し、ゆるしの関係性理論/関係に基づくゆるしの説明を提出することである。この目標を達成するための2024年度の目標はゆるしの理論について文献調査を行い、サーベイ論文を執筆することであった。それにより、これまでのゆるしの理論の特徴と、それらが説明の対象とするゆるし現象の種類を整理することで、次年度以降での「関係修正に基づくゆるしの説明」構築の基礎を築くことが目指された。 本年度は計画通り、非難の哲学と関連の深いものを中心にゆるしの哲学の文献調査を進めた。そのなかで、特にP・ヒエロニーミとD・ペレブームのゆるしの理論から、関係に基づくゆるしの理論の骨格となるアイデアが得られた。その内容は、ヒエロニーミは道徳的に不正な行為に被害者の道徳的地位への脅威が示されていることを非難の契機とし、またその脅威の解消をゆるしの根拠と据えたわけだが、この構造を、ペレブームの議論をふまえつつ、怒りとしての非難の解消から関係修正としての非難の解消に読み替えるというものである。結果として、ヒエロニーミが同定した被害者への脅威は被害者の道徳的地位のみに関わるものではなく、問題行動に含まれる脅威は、被害者と行為者との間にある関係性、関係において重視される規範(関係構成規範)、そして関係者としての被害者の立場の3点について向けられることを明らかにし、関係の修正によってそれらを解消することがゆるしの実践であるという、新しいゆるしの理論を提出するに至った。 このゆるしの説明では、従来説明の周縁に置かれていた私的な非難とゆるしをゆるしの理論の中心におくことで、従来の議論では扱いにくかった、日常的により一般的な、私的ないさかいにおけるゆるしの実践を理論的に説明できるようになる。この成果は関西倫理学会の年次大会で公表された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目の目標とされた独自の理論構築の原案が提出できたという点では、研究課題全体の目標からすると当初の予定以上の進展が見られる。その一方で、理論の構築に労力と時間を費やしたために、予定していた文献のサーベイが計画よりも進まなかった。この点をふまえて、進捗状況の評価は「(2)概ね順調に進呈している」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
計画時の2年目の目標は、初年度の文献調査の結果に基づき、ゆるしの関係性理論の構築を行い、関係修正説的な非難の説明をゆるし研究の文脈に位置づけることであった。ただし、理論の構築自体は本年度に終えられたため、今後はその理論的精査と精密化を目指す。また、初年度で不十分であったゆるしの哲学の文献調査を引き続き進めることで、自身の理論を広く研究領域のなかに位置付け、その意義を確たるものにすることを目指す。 また、できるだけ早期に理論を完成させ、英語で発表する準備を整える。3年目の最終年度には、国際学会を開催し、それを発表することを目指す。
|
Causes of Carryover |
研究会に招聘予定だった研究協力者が研究会に参加できなかったため。2年目に開催予定の第7回非難の哲学・倫理学への研究協力者招聘に使用する。
|