2023 Fiscal Year Research-status Report
現代イスラームの同性愛に関する総合的研究――前近代までの議論を踏まえて
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23K00063
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
青柳 かおる 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (20422496)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | イスラーム / 弱者 / マイノリティ / 同性愛 / 性的マイノリティ / 出生前診断 / 婚前スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
イスラーム世界の弱者、マイノリティ研究の一環として、2023年度は、イスラーム世界における同性愛者(とくにゲイ)に対する迫害の実態や迫害から逃れた人々の救済の実態などについて調査し、論文執筆を開始した。2024年度に論文を発表する予定である。 2023年度は、深刻な障害が確定した胎児に焦点を当て、イラン(シーア派)とサウジアラビア(スンナ派)における出生前診断、婚前スクリーニングを取り上げた。中東には、近親婚に伴うサラセミアという遺伝性疾患の患者が多いとされており、婚前スクリーニングが行われている。スンナ派のファトワー(法的回答)によると、出生前診断はイスラーム法的に合法である。胎児に深刻な障害がある場合、中絶は可能であるが、1)入魂前であることと、2)深刻な障害があることといった正当な理由があることが条件である。ただし具体的な疾患名については不明であった。出生前診断を受けたサウジアラビアの女性たちへのインタビュー記事も参照し、診断で胎児の障害が確定し中絶した女性たち、産み育てた女性たちの声を取り上げた。シーア派においては、胎児が障害をもつという理由だけでは、いかなる段階でも胎児を中絶することは許されないとするファトワーが出ているが、遺伝性疾患に関しては、中絶を可能とするファトワーが発出された。2005年には重症型サラセミアや血友病以外にも重篤な胎児の中絶が許可されている「選択的人工妊娠中絶法」が可決された。 また現代のイスラーム思想思想において大きな影響力を持っているサラフィー主義の法学者による、ガザーリー(1111年没)の哲学的要素に対する批判を取り上げた。そして現代の法学者が根拠とするサラフィー主義の先駆者である中世のイブン・タイミーヤ、ザハビーによる批判を分析した。 さらに、ジェンダー、同性愛を含む、総合的な生命倫理の著書の執筆を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イスラーム世界(とくに中東)における同性愛者への迫害および救済の実態について調査し、論文執筆を開始した。イラン(シーア派)とサウジアラビア(スンナ派)における出生前診断、婚前スクリーニングに関するファトワーをまとめ、先行研究も参照しながら、胎児に遺伝性疾患が生じる可能性のある当事者たちの声も紹介することができた。また現代のサラフィー主義者のガザーリー批判を取り上げ、現代イスラーム思想の一端を明らかにできた。以上については2本の論文を発表できた。さらにジェンダー、同性愛を踏まえた生命倫理をテーマとする著書の執筆も開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
イスラーム世界の同性愛者に対する迫害および救済について文献学的に調査を進める。現代の議論のみならず、前近代の文献も読み進める。同性愛に関する記述を含む著書を執筆する。
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Causes of Carryover |
ほかの研究費も使用させていただくことができたため、またコロナの影響を考え出張を差し控えたため、次年度使用額が生じた。今後は出張を行いたい。
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