2023 Fiscal Year Research-status Report
A research on the Interpretation of the Analects of Confucius in Modern China
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23K00089
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
于 臣 横浜国立大学, 国際戦略推進機構, 准教授 (70433373)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 現代中国 / 政府の政策 / 政治儒学 / 国学の復興 / 論語の解釈 / 普遍的価値 / 国際的発信力 / 文化への自信 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は主に資料収集と文献の整理に取り組んできた。5月から論語関係文献の収集を始め、古本を含む80冊ほどの日本語論語解釈関係文献を入手した。そして10月から北京現地の研究協力者のご協力のもとで中国語の論語関係書籍を100冊ほど購入した。資料の収集を行ったと同時に、文献の目録化にも取り組んだ。さらに日本論語普及会、中国孔廟のホームページなどの論語の活用に関する日中両国のウェブサイトにもアクセスし、比較分析を行うことで近現代中国における『論語』解釈の特徴を把握し、日本との共通点および相違点をとらえ、その異同が生じた要因を探ってみた。 研究の途中で最初に気づいたのは、中国での論語解釈の基本的な特徴である。そのなかで政府における国学をめぐる政策動向にあわせて、解釈する傾向が目立っている。これは日本と比較する場合、とくに気をつけなければならない重要なポイントである。そして近現代中国の国学のなかでもっとも重要な位置を占めるのが儒学である。それぞれの『論語』解釈を概観する前にまず儒学全体が中国でどのように捉えられているのかを見ておく必要がある。筆者が入手した文献を調べた限りでは、中国において儒学は政治儒学、学術儒学、文化儒学、生活儒学、ならびに民間儒学という角度から論じられていることが判明した。 筆者はまず政治儒学における論語解釈の性格を考察した。中国の知識人は伝統文化を復活させ、国際的発信力を強化しようとする政府の呼びかけに呼応し、「和を以て貴と為す」、「己の欲せざる所は人に施すなかれ」などの『論語』の名句を取り上げ、どのような解釈が世界通用の普遍的価値を持てるかを検討していることが分かる。しかし現実主義が蔓延るなかで『論語』のような伝統的な道徳や価値観は対外政策の展開にどのような役割を果たすことができるかがまだ不透明であり、引き続き検討していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題においては文献調査がもっとも大切である。これまで古い資料のみならず、最新研究動向にかんする文献も大量に入手した。これらの資料はこれからの比較研究の円滑な実施を確保することできる。現在まで資料収集を実施しながら内容の整理も進めてきた。論語を読むにあたり、人によって読み方が異なる。その相違をチェックするために、「仁」「義」「礼」「忠」「孝」「恕」などのキーワードを設定して、これらのキーワードをめぐる解釈状況を検証することでその違い、並びにその異同が生じた要因の解析を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は引き続き、国内外の文献収集および目録化、データベース化を実施する。そしてキーワードを用いて日中両国における論語解釈の類似点と相違点を見つけてみる。解釈者の背景に配慮しつつ、なぜその差異が生じたかを究明する。また、海外への実地調査も開始する予定である。
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