2023 Fiscal Year Research-status Report
村井弦斎「食道」思想の形成・継承・受容~近代日本における生活思想の普及をめぐって
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23K00092
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
水谷 悟 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 教授 (70779280)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 村井弦斎 / 「食道」思想 / 小説『食道楽』 / 雑誌『婦人世界』 / 村井多嘉子 / 村井米子 / 食育 / 断食 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、20世紀初頭に「食育」の重要性を唱え、妻・多嘉子と協力して「家庭料理」の実践を社会に示し、娘・米子への継承と読者への普及を試みた村井弦斎(寛)の「食道」思想の形成・受容過程を一次史料にアプローチし、その構造と機能を分析・解明することを目的としている。 研究の柱は以下の通りである。「①村井弦斎に関する一次史料を整理し、「関係史料」の全体像を把握する」「②『小説食道楽』の原稿・記事・単行本を照合し、弦斎の意図を解読する」「③『月刊食道楽』『婦人世界』の記事を読解し、「食道」思想の構成要素を確定する」「④夫妻・親子・作者と読者の関係に注目し、思想の形成・継承・受容過程を解明する」。 採択1年目は、主に①について、弦斎が唱えた「食道」思想の内容を考察する基礎作業として、神奈川近代文学館所蔵の関係史料につき調査を実施し、それに付随する形で②・③に関する作業を行った。計7名の学生たちの協力を得て、月2回程度の設定で年間計25回の調査を実施した。 責任者本人は「特別閲覧」資料を閲覧し、一次史料の解読に当たり、Excelに必要事項のデータを入力した。明治中期~昭和戦後に至る弦斎・多嘉子・米子宛の書簡史料が中心で、夫と妻・父と娘・著者と読者の関係に注目し、三人と関わりのあった人々との関係性を時代ごとに明らかにした。 学生たちは主に「雑誌・図書」資料を閲覧し、一覧表の作成に従事した。責任者の意図を理解し、積極的に作業を進め、当初の予定よりも早く一覧表が完成し、弦斎関連の記事を必要に応じて複写した。また、国立国会図書館所蔵の『報知新聞』マイクロフィルムを閲覧し、弦斎が連載していた小説「食道楽」を閲覧・複写した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りに月2回程度の調査を実施することができており、かつ協力してくれている学生たちが研究責任者の意図を十分に理解し、積極的に作業に取り組んでくれているため、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
採択2年目も主に「①村井弦斎に関する一次史料を整理し、「関係史料」の全体像を把握する」ことに注力する。特に神奈川近代文学館所蔵の「一次史料」の解読に努める。すでに「雑誌・図書」の閲覧はおおむね終了したため、今後は協力学生たちに「一次史料」の解読を補助する作業に従事してもらう。引き続き、書簡・日記・メモ・原稿など種類ごとに分類し、年代別・宛名別の件数を確定した上で、史料の内容を解読・分析していく。 また、平塚市立博物館所蔵の関係史料を閲覧・解読する必要があるため、先方と日程を調整し、年度内に調査を実施する予定である。 なお、採択1年目の研究・調査のなかで、村井弦斎の生まれ故郷である愛知県豊橋市の市立図書館にも弦斎の父・清に関する史料が所蔵されていることが判明したため、豊橋への史料調査も追加していく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、採択1年目は神奈川近代文学館に所蔵されている村井弦斎関連史料の調査を優先したことで、複写できる対象が雑誌・図書資料に限られており、想定したよりも分量が少なく=料金もかからなかったことと、関連書籍の購入等に手が回らなかったことが挙げられる。加えて、史料調査に協力してくれた学生たちへの人件費・謝金を優先し、研究者本人の旅費・宿泊費等を計上しなかったことも影響している。 2年目以降も、引き続き弦斎関係史料の全体像を把握するための基礎作業に力を注ぎ、史料調査に協力してくれる学生たちの謝金に加え、愛知県豊橋市にも調査に行く必要が生じたため、研究者本人の旅費・宿泊費を計上する形で研究費を使用していく予定である。
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