2023 Fiscal Year Research-status Report
Iwata Toyo-o's reception of French Theater seen through his European theater notes
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23K00121
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
小田中 章浩 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 教授 (70224251)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 岩田豊雄 / 獅子文六 / フランス演劇 / 滞欧観劇ノート / 岸田國士 / 神奈川近代文学館 |
Outline of Annual Research Achievements |
神奈川近代文学館に保管されている岩田豊雄の手稿、「滞欧観劇ノート」2冊を調査し、1922年から1925年までに岩田がフランス、バリで観た芝居、オペラ、バレエ約270本(観劇記において一つにまとめられた複数の小品、あるいは題名のみ記されたものがあるが、これらを独立した本数に含めるかどうかの判断は当面保留し、現時点では概数で記す)、ならびに1925年以降にドイツ、オーストリア、さらにパリで観た約60本(本数については上述の原則に従う)の芝居のデータベースを作成した。これによって岩田が当該期間にどのような作品を観たのか、その中でもどのような作品に注目したのかを概観することが可能となった。 次に「滞欧観劇ノート」の自筆原稿を文字起こしするために、神奈川近代文学館で2週間かけて、小説『可否道』(『コーヒーと恋愛』)の刊本と、同作品の新聞小説連載時の岩田の自筆原稿を照合し、岩田の自筆原稿の独自の書体を研究した(岩田はかなりの悪筆である)。それに基づき、「滞欧観劇ノート」第1冊目から順次原稿起こしを開始した。 それと同時にフランス国立図書館に収蔵されている当時の新聞記事、演劇雑誌の参照することによって、岩田が滞在時のフランス(パリ)の劇界についての情報を収集した。 一方、岩田豊雄と相前後してパリに滞在し、フランス演劇について学んだ岸田國士は、後に岩田と共に文学座を創設し、日本の近代演劇のイメージ形成に大きな役割を果たした。両者がパリで接した舞台は、同じ劇作家、演出家によるものがかなりあるが、岸田が残した舞台の回想と、岩田が「観劇ノート」に記している舞台の印象の違いについても調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
岩田豊雄の自筆原稿については、予備調査の段階からこれを原稿起こしするには、岩田の手稿の特徴について研究する必要があり、これに相当の時間を要することが予想された。しかし本務校での学務の関係上、神奈川近代文学館で現地調査を行う機会が想定よりも限られた ただし神奈川近代文学館で示唆を受け、岩田豊雄の著作権継承者の合意の下で、「滞欧観劇ノート」第1分冊の電子版を期間限定で借り受けることができることがわかった。これによって神奈川近代文学館に直接赴かなくても「滞欧観劇ノート」の調査が可能となった。この手続きに多少の時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は「滞欧観劇ノート」第1分冊の中でも、特に注目すべき観劇記に的を絞って原稿起こしを進めると共に、これに対応するフランス側の劇評、当時パリで注目されながら岩田が取り上げなかった舞台の調査を進め、岩田がパリで受容した「近代劇」がどのようなものであったか、その理解を進める。また研究予算の関係で前年度は実現しなかった「滞欧観劇ノート」第2分冊についても、その電子版の期限付き貸与を求め、「滞欧観劇ノート」全体の理解を深める。これらに基づき、日本での学会発表、日本語での論文執筆を計画する。
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Causes of Carryover |
今年度、神奈川近代文学館から岩田豊雄の「滞欧観劇ノート」第1分冊の電子版の期限付き貸与を受けることができた。ただしこれに約290千円の費用を要した。第2分冊に関して同様に期限付き貸与を受けるには、年度内予算が不足したので、これを次年度に繰り越し、次年度予算と合わせて第2分冊の期限付き貸与費用に充てたい。
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