2023 Fiscal Year Research-status Report
音楽のモダニズム運動における音響再生産メディアの役割 バルトークの事例を中心に
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23K00142
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
太田 峰夫 京都市立芸術大学, 音楽学部, 教授 (00533952)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | フォノグラフ / 民謡研究 / バルトーク / ストラヴィンスキー / 自動ピアノ / 音響再生産メディア / 自作自演録音 / 音楽のモダニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では「初期の音響再生産メディアは、同時代の音楽家達の作品観や演奏観にどのような変化をもたらし たのか。また逆に、彼らの作品観や演奏観は、音響再生産メディアの向かうべき方向に関して、どのような可能性を提示したのか。」の2点について、とくにバルトークやストラヴィンスキーなど、モダニズム的な作曲家達の事例から考察するが、本年度はバルトークのことでほとんど手一杯であった。 具体的な実績は2つ。まず、「作曲家の自作自演録音の美学的位置付け」、具体的にはバルトークの自作自演録音の規範的性格について、ブルガリアン・リズムの事例をもとに考察した。次年度に学会で発表を行う。また、これに関連して、論文も完成させたい。 次に、「フォノグラフによる民謡採集が作曲家にもたらしたインパクト」、具体的にはフォノグラフがバルトークの民謡研究の展開にもたらしたインパクトについて、記譜スタイルの変遷に着目した論考をまとめた。未完成なので、こちらも次年度の論文化を目指す。 細川周平(編)『音と耳から考えるーー歴史・身体・テクノロジー』(2021年)など、聴覚文化論の文献も読むことができた。ストラヴィンスキーについては、彼と自動ピアノとのかかわりについてらの先行研究(Mark McFarlandの"Stravinsky and the Pianola A Relationship Reconsidered" (2011)など)を読むところで止まってしまったので、これについては次年度以降、掘り下げたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査のための出張の時間が取れず、全般的には一次資料の調査がやや不足気味であり、開始時と比べて視野が大きく広がったとまでは言えない。しかしながら、いくつかの小さなトピックについては考察が深まり、じっさいに論文や発表の準備も進みつつある。とくに自作自演録音の研究については、次年度中には学会発表や論文の投稿など、具体的な成果につなげられると見込んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
作業中のトピックに関して、論文化をすすめる。できれば次年度中に投稿へと繋げたい。並行して学会発表を行い、関連のテーマに取り組む研究者たちともディスカッションを行いたい。 また、ブダペストをはじめ、海外でも一次資料の収集をすすめ、視野を広げていきたい。
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Causes of Carryover |
スケジュールの都合で、資料収集や学会発表を思うように行えなかった。本年度準備した成果を次年度に学会で発表する予定なので、本年度使用しなかった旅費を学会発表分の旅費にあてる。次年度分として請求した助成金(の旅費相当分)は、おもに資料収集のための出張費にあてる。
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