2023 Fiscal Year Research-status Report
Performance Expression of Chopin's Works by Modern Piano and its Variations
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23K00219
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
多田 純一 京都市立芸術大学, 日本伝統音楽研究センター, 客員研究員 (90635278)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ショパン / ショパン国際ピリオド楽器コンクール / 演奏表現 / 即興性 / エディション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、フリデリク・フランチシェク・ショパン(1810-1849)の作品における、モダン楽器のピアノによる演奏表現とその変化を明らかにすることである。ピリオド楽器(古楽器)のピアニストが追求しようとする、ショパンが存命した時代の演奏様式の再現が、モダン楽器(現在の一般的なピアノ)の演奏にどのような影響を与えるのか、ということを考察する。 本研究の初年度にあたる2023年度は、「研究実施計画」に示した4つの項目のうち、次の2点に目標を定めた。①2023年に開催が予定されている第2回ピリオド楽器コンクールを現地にて視察し、出場者の演奏について、即興演奏、ヴァリアントの選択、再現部における表現の変化、選曲を分析する。②2024年に行われる国際ショパン学会に参加し、第2回ピリオド楽器コンクールにおける演奏表現についての分析を発表する。第2回ピリオド楽器コンクール出演者が使用したエディションの一覧資料を入手し、その傾向を分析すると共にデータとして提示する。 ①については、2023年10月にポーランド(ワルシャワ)にて第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクールが開催された。研究代表者である多田純一と、研究協力者である岡部玲子および武田幸子により、現地調査を実施した。2018年に行われた第1回よりも作品に前奏を付加することや、装飾音の付加が積極的に行われていた。演奏表現に関する具体的な考察は次年度に行う。 ②については、第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクールの現地調査実施時に、現地にてポーランド国立フリデリク・ショパン研究所のコンクール担当者と面会し、コンクール後に出演者が使用したエディションの一覧資料データを入手した。初年度はこのデータを分析した論文を3名の共著として作成し、現在、査読の結果を待っている状況である。査読に通れば5月末に刊行される予定となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にて述べた通り、第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクールについての現地調査は計画通りに実施することができた。調査を実施するにあたり、事前にチェックシートを作成し、即興的な「前奏」、即興的な「つなぎ」、即興的な「音」や「装飾音」の付加、変更、挿入が行われたのかどうか等について、実際の演奏を聴きながらチェックした。このチェックシートの内容および演奏表現について初年度に考察する予定であったが、後述する理由により、次年度に持ち越すこととした。調査そのものは無事に実施され、記入したチェックシートは保管しているため、研究が遅れている訳ではない。 演奏表現の考察を次年度に持ち越すことにした理由は、「研究実施計画」に示した「②2024年に行われる国際ショパン学会に参加し、第2回ピリオド楽器コンクールにおける演奏表現についての分析を発表する。第2回ピリオド楽器コンクール出演者が使用したエディションの一覧資料を入手し、その傾向を分析すると共にデータとして提示する」の後半部分にあたる、出演者が使用したエディション使用一覧の資料をコンクール直後スムーズに入手できたためである。本研究の研究代表者および研究協力者は、過去のショパン国際ピアノ・コンクール、第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールの参加者が使用したエディション一覧に関する資料の提供を受けているが、コンクールを開催するポーランド国立フリデリク・ショパン研究所から、いつデータを提供していただけるのかについては、その都度、状況によって異なっていた。そのため、当初は本研究の2年目にあたる2024年度にデータとして提示することを目標としたが、初年度に入手できたことから、順序を入れ替え、先に論文として発表することとした。これらのことから、総合的には「おおむね順調に進展している」と言うことが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では、本研究の初年度に実施した第2回ピリオド楽器コンクールの現地調査に基づき、2年目にあたる2024年に国際ショパン学会に参加し、コンクールにおける演奏表現についての分析を発表する予定であった。しかしながら、2024年には国際ショパン学会が開催されないことが2024年3月下旬に明らかになった。そのため、国際ショパン学会における発表は2025年以降に持ち越すこととし、その代わりとして、2024年度は第20回ショパンと彼のヨーロッパ音楽祭の現地調査を実施する。 第20回の記念年となるこの音楽祭では、歴代のショパン・コンクールおよび昨年のピリオド楽器コンクールの審査員や入賞者が多数演奏することが決まっている。8月17日は第2回ピリオド楽器コンクール優勝者であるエリック・グオのコンサートからはじまり、9月8日まで計45公演が予定されており、ピリオド楽器のピアニストとモダン楽器のピアニストの演奏表現の違いの有無を知るために、本研究の調査対象として適していると言える。 2024年度は音楽祭の現地調査を実施すると共に、初年度に現地調査を実施したピリオド楽器コンクールにおける演奏表現を分析、考察した論文を作成し、発表することを目指す。 「研究実施計画」に示した4つの項目のうち、次の2点については当初の予定通りの実施を目指す。③2025年に開催が予定されている第19回ショパン・コンクールを現地にて視察し、出場者の演奏について、即興演奏、ヴァリアントの選択、再現部における表現の変化、選曲を分析する。④2026年に行われる国際ショパン学会に参加し、第2回ピリオド楽器コンクールと第19回ショパン・コンクールにおける即興的な演奏表現の違いについて発表する。第19回ショパン・コンクール出場者が使用したエディションの一覧資料を入手し傾向を分析する。
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Research Products
(9 results)