2023 Fiscal Year Research-status Report
音楽アウトリーチ・コーディネーターの資質に基づいた育成プログラムの開発
Project/Area Number |
23K00246
|
Research Institution | Nagoya University of Arts |
Principal Investigator |
梶田 美香 名古屋芸術大学, 芸術学部, 教授 (70620467)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | アウトリーチ / 実施スタイル / アーティストの能力 / アウトリーチ制作者 |
Outline of Annual Research Achievements |
音楽アウトリーチを実施している公立文化施設に対して、アウトリーチの実施状況を調査した。 その結果、アウトリーチを実施していると回答した施設の内、82%が音楽アウトリーチを実施し、その内の79.3%が鑑賞を中心としたスタイル、49.4%が鑑賞と参加を同程度で併用したスタイルを実施していることがわかった。また、年間実施回数が10回未満の施設では鑑賞を中心としたスタイルのみの実施が53.5%を占め、それに対して50回以上実施している施設では、鑑賞と参加を併用したスタイルや複数のスタイルの実施が89.8%を占めていることもわかった。このことから、鑑賞を中心としたスタイルから始め、経験を重ねながら参加や創作を含むスタイルの実施に至ることが推測されるに至った。 公立文化施設がアーティストに求める能力についての調査では、演奏力だけではなく、コミュニケーション能力、ファシリテーション能力、コーディネート能力が挙げられた。また対象者に寄り添う人柄も重要視しているという結果を得た。特に、鑑賞と参加を併用しているスタイルでは、全ての能力が満遍なく求められることがわかった。しかしながら、アーティストの選考方法は、舞台公演事業を依頼しているアーティストの起用が66.7%を占めており、アウトリーチに求める能力を指標とした選考が行われていないことが明らかとなった。これらのことを反映するように、円滑なアウトリーチを実施するためには、アウトリーチ等のラーニングプログラムを専門とする制作者やアーティストと施設のアウトリーチ事業担当者を繋ぐ人材が求められるという結果を得た。 この調査結果を踏まえ、アーティストと公立文化施設のアウトリーチ制作者に質的調査を行ったところ、アーティストと制作者の間にアウトリーチに対する熱意の差や、関係性の希薄さがあることがわかった。次年度の調査でさらに調べたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
公立文化施設でアウトリーチを実施しているアーティストへの量的調査を実施する計画だが、アーティストへの調査協力を依頼する公立文化施設の分類に時間を要している。公立文化施設への量的調査でアーティストへの調査協力依頼の可否を尋ねたところ、多くの施設が調査協力を可としているため、その分類が複雑になっていることが理由である。2023年度は、量的調査に回答した一施設をクロースアップし、アウトリーチを実施しているアーティストへのヒアリングを行ったのみにとどまった。
|
Strategy for Future Research Activity |
計画を次のように変更したい。 2024年度は、アウトリーチのスタイルごとに、アーティストに対する意識調査(定量調査)を行う。また、定量調査に基づいた定性調査を兼ねて、アーティストと制作者・コーディネーターを対象とした公開シンポジウムを長久手市文化の家と協働で実施する。また、スタイルごとにアウトリーチの参与観察を行い、特徴を分析する。この他、東京文化会館における人材養成プログラムの実態調査を行う。これらの結果を、日本アートマネジメント学会にて発表する予定にしている。当初予定していた、アウトリーチ・コーディネーターの資質整理は延期し、コーディネーター育成プログラム開発と併せて2025年度に行う。
|
Causes of Carryover |
当該年度の研究計画が予定通りに進行しなかったため、計画が翌年度に持ち越しになった。2024年度は、アーティストを対象とした定量調査を行うためのアンケート有料ソフト及び分析のための人件費、公開シンポジウムの登壇者への謝金、アウトリーチ参与観察と人材養成プログラム実態調査にかかる交通費、学会発表にかかる学会費、参加費、交通費に使用する。また、当該年度の研究内容をまとめた論文発表のための論文投稿料と論文掲載料(採択の場合)等、研究発表のための費用に使用する。
|