2023 Fiscal Year Research-status Report
近世文化形成における芸能情報の文芸化、及び商品化についての研究
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23K00309
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
倉橋 正惠 立命館大学, 研究部・衣笠リサーチオフィス, 職員 (90425017)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 歌舞伎 / 出版 / 浮世絵 / 近世文学 / 情報 / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は平成29~令和2年度にかけて行った「歌舞伎興行と近世期出版商業活動における連動性についての発展的研究」(基盤研究C・課題番号17K02475、研究代表者倉橋正恵)の研究成果をもととして、近世期のメディアという視点から芸能と文芸、及び出版活動の密接な関係性を探り、情報社会でもあった近世都市文化形成の一端を明らかにしようと試みるものである。 今年度は役者の個人情報や評価、格付けなどを記した「役者給金付」や一枚摺の「役者評判記」という出版物に注目し、役者の似顔、屋号、俳名、住所、格付けを示す給金額といった個々の役者情報を収集して今後の役者研究の基礎を完成させることを第一の目標とした。その結果、18世紀末から19世紀末にかけて約220点の資料に収録された約600名の役者についての情報約3800件を収集し、それらを全てデータベース化した。これと同時に、役者給金付については資料ごとの翻刻原稿を作成し、今後本研究の成果発表の一つとして予定している資料集刊行の準備を開始することができた。 また、今年度は幕末から明治初期にかけて江戸・東京で流行した役者の評判や噂を風刺的に絵画・文芸化した「役者評判絵」についても注目し、約170点の作品目録を作成した。今後はこの作品目録をもとに、役者評判絵を中心とした資料集の刊行準備を開始する予定である。さらに、役者評判絵からは各作品に描かれている役者や、画中に描きこまれた詞書についても詳細なデータを収集している。次年度以降はこれらのデータを解析して、19世紀中頃の江戸・東京の歌舞伎界の相関図を作成し、それぞれの役者に対する当時の評価についてもまとめた学術論文等を研究成果として発表していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は職務上の問題により、本研究の研究調査に費やすことのできる時間が当初予定していたものよりも著しく減少した。そのため、これまでに収集してきた資料から役者に関する情報を収集し、役者情報データベースや作品目録を作成するまでにとどまり、研究発表や研究論文の公刊といった成果発表に至ることができなかった。この点を考慮して、上記の進捗状況とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は多様な出版物から収集した役者情報の研究成果公開を目指すと共に、元となった資料群のデジタルアーカイブ化をすすめ、資料の画像についても広く一般に公開することを目指す。また、今後江戸後期の歌舞伎役者の基礎研究を充実させるため、資料集の刊行を目標に掲げてその準備を開始する。 加えて、コロナ禍で中断していた近世期から近代にかけての歌舞伎を中心とする芸能興行についての研究会活動を再開し、江戸・中村座の日記資料『中村座日記』の資料集刊行準備を再開させると共に、歌舞伎を中止とした芸能興行と近世期の出版活動の関係性についての研究をさらに深めていく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度にデータ入力の謝金分として計画していた予算であったが、当初予定していたデータ入力を研究代表者自らで行ったために謝金が支出できなかった。 また、旅費として計画していた予算についても、各所蔵機関のデジタルアーカイブ化によって実際に資料を閲覧する必要がなかったため、計画していた使用額との差が生じた。 次年度には今年度中に完了していないデータ入力を外部に依頼して、その謝金を支払うと共に、国外所蔵機関も含めてまだデジタルアーカイブ化されていない演劇資料についての調査旅費として執行することで、差額が生じた分を使用していく予定である。
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