2023 Fiscal Year Research-status Report
2000年代以降の中国映画産業と台湾および香港映画との関係性をめぐる研究
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23K00348
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
阿部 範之 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (20434681)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 中国映画 / 台湾映画 / 香港映画 / 華語圏映画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は三年間で、およそ2000年から2020年までの中国、台湾、香港の各映画産業の動向を整理し、考察を行った上で、最終的に相互の関係についてその全体像を提示する予定のものであり、現段階では、中国、台湾、香港の各映画産業の動向の整理を順次進めている。 中国については、中華人民共和国建国以降のプロパガンダ映画の系譜について考察を行ったほか、現在までに至る中国映画の特色に関して簡潔な考察を行った。これらについては今後順次発表していく予定である。 台湾については、現代の台湾映画界を代表する鍾孟宏監督に関して研究を行い、論文として発表した(「グローバル化する東アジア映画と鍾孟宏監督作の中の家族」『中国21』Vol.59)。鍾孟宏は2006年に長編映画監督デビューを果たして以降、台湾の家族を題材に多くのフィルムを送り出してきた人物で、台湾内では評価が高い。この論文では、彼のフィルムについて、韓国のポン・ジュノ監督作品などを比較対象にしながらその特徴を分析するとともに、21世紀における台湾映画の動向にも言及した。そのほか、台湾映画の歴史において重要な台湾ニューシネマについても分析を行い、鍾孟宏以上に世界的に知られる侯孝賢監督のフィルムに関する講演を行った(「台湾映画の中の日本家屋―1980年代のニューシネマが見出した庶民の歴史」、京都高齢者大学校講座「東アジア(日中韓)の文化芸術」)。 香港については特に2010年代以降の動向に注目し、資料の閲覧や整理を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
台湾映画に関して論文を公刊したほか、今後発表を予定している中国映画に関する論考を執筆する中で、2020年ごろまでに至る台湾、中国の映画産業の展開についての基礎的な整理が進んだことが理由として挙げられる。また主に中国に関して、2007年から2022年までの『中国電影産業研究報告』など、多くの資料を入手できたため、今後それらを活用することで、より着実な成果が挙げられることも期待できる。香港に関しては、資料収集および調査が十分に進んでいないが、近年話題となっている香港の若手監督たちのフィルムを多く鑑賞する機会があり、その分析をもとに新しい視座が加わったことが研究の進展に寄与している。 以上のように、突発的な大きなトラブルなどはなく進行しているため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進のために、以下のような方策を想定している。 第一に、香港の映画産業を軸とした分析に尽力する。特に、1990年代なども含めた香港の映画産業の変遷をまとめながら、映画市場および製作状況についてのデータの収集、および映画政策の整理などを中心的に進めていく。 台湾については、引き続き映画市場や製作状況について調査を進めながら、特に中国との合作映画や台湾映画の中国市場での興行成績、また台湾の映画人の中国進出、および香港映画界との関係性の変化などについて調査および検討を加えていく。 中国については、引き続き映画市場・製作状況にについて調査を進めながら、香港および台湾映画界との連携のあり方について検討を加えていく。
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