2023 Fiscal Year Research-status Report
Representation of Human Figures / Faces in the works of D. G. Rossetti and Other Writers: Transforming Views of Nature in 19th Century Britain
Project/Area Number |
23K00375
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
加藤 千晶 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (00833625)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | D. G. ロセッティ / ラファエル前派 / 人物 / 顔 / 自然観 / ヴィクトリア朝 / 文学と絵画 / 19世紀 / 表情 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、D. G. ロセッティ及び周辺の作家達の作品にあらわれる虚ろな顔の表象に着目し、この「顔」の重要性・特異性・影響力を、共時的、通時的に調査・分析し、解明することを目的とする。初年度である2023年度は、研究計画に基づき、当時の新聞・雑誌に掲載されたロセッティ及びラファエル前派の作品の展覧会評から、本課題の問題となる「顔」の定義づけを行うことに努めた。ラファエル前派兄弟団結成(1848年)後、P.R.B.(Pre-Raphaelite Brotherhood)のイニシャルの意味が明らかになる前後のジャーナリズムの言葉を具体的に検証した結果、彼らのスローガン「自然に忠実」が、当初の彼らの意図に反して、殆ど戦略的に、不自然で人工的な身体の表象を生み出していることが観察できた。ディケンズの痛烈な批判、ラスキンの擁護、ジョシュア・レノルズの提唱、また当時流行した骨相学・観相学などの当時の著名な言説を参照しつつ、これらの陰で注視されなかった批評の言葉を拾いあげることで、アカデミーの「理想」に対抗してルネサンス以前の「自然」―簡素で技巧を欠きながらも「個」や「細部」にこだわる写実性―に回帰したはずの彼らの作風が、結果として人工的で表情を欠く人体表現を生み出した過程が、客観的に言語化されていることを確認した。 上記の研究の具体的な成果として、研究発表「初期ラファエル前派における顔の生成――『自然に忠実』 vs人工」を行い、美術の創作活動に関わる方も含め、文学・美術両面において、会場の方々と活発な意見を交換することができた。また、この発表に基づき、論文をまとめて刊行した。さらに、当研究と関連する分野の書籍の書評の依頼を受けて寄稿したほか、当研究のテーマがあらわれるロマン派の詩について、一般向けの公開授業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、本研究の中心となる「顔」の表象の定義づけを行い、研究計画の土台を固めることに主眼を置いた。ロセッティ及びラファエル前派の作品の展覧会評を分析することで、本研究の要となる部分を言語化し、口頭発表、論文という形にすることができた。また本研究と関連する分野において書評を刊行し、一般向け公開授業を行った。以上のことから、「おおむね順調に進展している」と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度以降は、2023年度に継続して、ロセッティの絵画だけでなく詩作品における顔の表象の考察を進めるとともに、ラファエル前派以外の同時代の周辺の作家にも視野を広げ、ウォルター・ペイター等の作品における男性の顔の例も考察の対象としながら、文学・絵画の両面から特徴を比較・検討してゆきたい。
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Causes of Carryover |
2023年度は、すでに収集した、あるいは国内で収集できる当時の新聞・雑誌の展覧会評の分析を行うことに専念したため、海外での資料収集のための旅費が生じなかったことと、検討していた物品(パソコン)の購入が年度内に間に合わなかったことから、次年度使用額が生じた。次年度にパソコンを購入し、海外図書館等での調査を行いたい。
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Remarks |
・「絵画と一緒に読むイギリス詩」2023年度山梨県下高校生への公開授業「知のフロンティア」、山梨大学総合研究棟、2023年8月2日 ・イギリス・ロマン派学会四季談話会において、講師の鈴木理恵子氏(早稲田大学)による発表「19世紀英国におけるソネット」の司会を務めた。2024年3月9日
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Research Products
(3 results)