2023 Fiscal Year Research-status Report
A Comparative Study of The Diary of Anais Nin among the Edited, Early, Unexpurgated Edition and Archive Material
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23K00385
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Research Institution | Niigata University of International and Information Studies |
Principal Investigator |
矢口 裕子 新潟国際情報大学, 国際学部, 教授 (30339931)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 自伝 / 日記 / 女性文学 / ジェンダー / セクシュアリティ / フェミニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、『アナイス・ニンの日記』編集版・初期・無削除版・アーカイヴ資料を比較研究し、21世紀にふさわしい、作家としてのニン再読・再評価を実現する試みである。 初年度である2023年は、8月に2週間ほどUCLA図書館に赴き、手書き日記9-22巻の調査を行なった。 大きな成果として、Critical Analysis of Anais Nin in Japan (Sky Blue Press)、『アナイス・ニンの魂と肉体の実験室――パリ、1930年代』(小鳥遊書房)を出版した。前者は日本人研究者によるニン論集で、Introductionに加え、3本の論文(“Twittering Machine of Paradise: Glimpses of Two of Anais Nin’s Japanese Daughters” “A Spy in the House of Sexuality: Rereading Anais Nin through Henry and June” “The Text That Is the Writer”)、1本の翻訳(Shigeru Kashima, “Imagination That Is Impure, Strange, and Demonic: A Review of The Diary of Anais Nin”)を寄稿した。冥王まさ子、矢川澄子、野島秀勝等日本人による優れたニン論をある程度歴史的に網羅し、世界に発信した意義は大きいと考えられる。また後者は、30年代のパリにニンの可能性の中心があると捉え、その時代と場所で書かれた、もしくはその時代と場所を描いた作品を集中的に取り上げたもので、本邦初となるニンのモノグラフである。長く停滞していた、もしくは近年、作家論・作品論が論じられることの少なかったニン研究を更新したものと自負している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『アナイス・ニンの魂と肉体の実験室』の出版が2023年末に延びたこともあり、アーカイヴ資料の吟味、分析が充分に行えなかった面はあるが、拙著の「はじめに」、4章「インセストーー書くこともまた侵犯である」、7章「反『ヘンリー&ジューン』小説としての「ジューナ」」の試訳は終えた。また、英語圏で出版予定のニン論集のために6章「アナイス・ニンの埋められた子どもーー『人工の冬」パリ版という旅」を訳出した。
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Strategy for Future Research Activity |
拙著のうちいずれかの章を英訳、加筆訂正したものを英語圏の学術誌に投稿する可能性を探る。本全体の英訳を着々と進める。英語圏での出版を目指すことが第一だが、その上で、フランス語版を出版する可能性も探りたい。2024年3月のフランス出張で、日本文学研究者でパリシテ大学名誉教授の酒井セシル氏とお目にかかった。フランスでの文学研究書出版の状況もさまざまな困難があるようで、一筋縄にはいかないと思われるが、今後二ン関連の情報を共有することでは合意した。
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