2023 Fiscal Year Research-status Report
The North Indian courts and the development of Hindi prosody
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23K00456
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長崎 広子 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 教授 (70362738)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | ヒンディー語 / ブラジ・バーシャー / 韻律 / ムガル宮廷 / 宮廷詩人 / 詩論 / 宮廷文学 / ヒンディー文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒンディー韻律学を概観する目的で、ヒンディー詩論書の著者である17世紀のSukhdev Mishraを特に中心的に初年度は考察した。以前の科研費補助金による研究によってインド国内で収集した彼の詩論書の写本と比べるために、インド国外で所蔵されている同著者の写本と刊本を調査した。ロンドンのBritish LibraryとWellcome Collectionでヒンディー韻律関連資料を閲覧し必要なデータを保存した。British LibraryではSukhdev Mishraの子孫で韻律研究者であるDurga Shankar Mishraが著したSukhdev Mishraの生涯と作品に関する研究書が見つかり、そこから彼が仕えた宮廷や王たちとそこで著した韻律書についての情報を得ることができた。イギリスの植民地時代に書かれた韻律教科書から、当時も韻律学が教養として必要な知識とされていたことが明らかになった。Wellcome Collection Libraryでは18世紀の宮廷詩人であり韻律書の著者でもあるBikharidasの写本と、断片的にヒンディー韻律学を扱った詩論書の写本を閲覧し記録に収めることができた。 韻律用語集を作成し、その英訳を行い、今後も作業を継続する。 Sukhdev Mishraの韻律書の校訂作業を行い、今後も継続する。 ムガル帝国期の宮廷文学と詩人たちについて、ワルシャワ大学のAleksandra Turek博士を尋ねて研究会を行った。ワルシャワ大学で開催された国際セミナー(International Seminar Striving for harmony in Indian culture and society)において、古ヒンディー語を代表する韻文Ramcaritmanasに関する研究発表を行った。 古ヒンディー文学の特に3言語(Avadhi, Rajasthani, Sadhukkari bhasha)のテキストを基にした韻律を比較分析し、論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究はインドに所蔵されている古ヒンディーの韻律書の収集を行ってきたが、本研究では初年度にロンドンのBritish LibraryとWellcome Collection Libraryに所蔵されている古ヒンディーの韻律写本と韻律関連書籍を閲覧しデータに収めることができたことで、より包括的な研究資料を扱うことができる。これまで研究に用いられていなかった資料であり、インド国外に散逸した写本のデータは特に本研究では貴重である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に収集した初期のヒンディー韻律学で歴史上重要とされているSukhdev Mishraと Bhikhari Dasの著わした韻律書の内容を比較し、共通項と違いを明らかにしたうえで、専門的な韻律書がヒンディー韻律学として何をどこまで論じているのかを考察し、ヒンディー韻律の概要を明らかにする。Bhikhari Dasの校訂本にくわえて、初年度にデータを得られた写本を使用する。 韻律学と宮廷とパトロンとの関係性の解明:Sukhdev Mishraの場合は冒頭での謝辞と作例にパトロンである王の名が読み込まれており、ほかの宮廷詩人の韻律書などでもパトロンである王の存在を探しだし、宮廷と韻律書の著者の関係、ひいては韻律学の振興と発展を支えたパトロンについて当時の歴史的背景と関連付けて考察する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた海外調査2件は、円安による航空運賃の高騰のため、1件のみ実施した。未使用額が生じたが、それを使用して次年度海外調査を実施する。
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