2023 Fiscal Year Research-status Report
ポルトガル語を中心とするロマンス諸語における口語の歴史的推移について
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23K00477
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
水沼 修 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (10795438)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川口 裕司 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (20204703)
黒沢 直俊 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (80195586)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ポルトガル語 / フランス語 / ロマンス語学 / 話し言葉コーパス / 歴史言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトは,ロマンス諸語、主にポルトガル語を対象とする歴史的な口語研究の基盤を可能な限り確立し,将来における多角的な分析の基礎となるような資料体を構築を目指すものである.本プロジェクトの対象となるのは,ポルトガル語における13世紀から18世紀頃までの散文物語作品にみられる直接話法を中心とした会話部分であるが,本年度は,パイロット的な調査として,13世紀の聖杯物語群テクストであるDemanda do Santo Graal,および,14世紀に作成されたとされるHorto do Esposoの2つのテクストについて,それぞれ会話部分を抽出し分析を試みた.なお,これらの研究成果については,日本ロマンス語学会および日本ポルトガルブラジル学会で口頭発表を行っており,また,論文等の発表も準備しているところである.これと並行して,コーパスの構築に必要な,各時代を典型的に代表すると思われるテクストの検討を行った.また本プロジェクトでは,聖杯物語群の会話部分に関する古仏語と古ポルトガル語の対照コーパスを構築することも目指しており,そのための準備も行われた.また,語用論的観点からの質的・量的分析を念頭におき,言語特徴や表現レベルでの調査対象項目について精査した.前述の2つのテクストについては,質的評価プログラムソフトを利用した分析を進めているところであり,次年度以降,分析対象とするテクストを随時増やしていき,コーパスを構築するとともに,過去の言語使用の慣習がどのような時代とともにどのように変化したのかを記述を試みようと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パイロット的な調査として,13世紀の聖杯物語群テクストであるDemanda do Santo Graal,および,14世紀に作成されたとされるHorto do Esposoの2つのテクストについて,それぞれ会話部分を抽出し,質的評価プログラムソフトを利用した分析を進めている.コーパスの構築に必要な,各時代を典型的に代表すると思われるテクストの検討を行い,ある程度候補が絞られた.,語用論的観点からの質的・量的分析に向けた調査対象項目についての検討を行ったが,これについてはまだ精査の余地がある.本年度は,諸事情によりポルトガル やフランスでの現地調査や現地研究者との打ち合わせを行うことができなかったため,次年度はこれらを通じ,より多角的視点に基づいた調査を進めていきたい.
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Strategy for Future Research Activity |
本プロジェクトの対象となるポルトガル語における13世紀から18世紀頃までの散文テクストを選定し,コーパス化を進めていく.次年度は13世紀から15世紀にかけてのテクストを中心に作業を行う予定である.コーパス化に際し,古ポルトガル語や古仏語に精通した研究者たちに協力を仰ぎ,作業の正確性および効率を高めていきたい.これらのテクストの直接話法を中心とした会話部分について,質的評価プログラムソフトを利用し分析を行う。また,現代語に関する先行研究から話し言葉テクスト特有の現象を可視化 し、演劇テクストなどとの対照評価を行い,成果を国内学会で発表する予定である。また,ポルトガルやフランス国立図 書館等での調査や、現地研究者との意見交換も積極的に行っていきたい.
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Causes of Carryover |
本年度は,諸事情により,当初予定していたポルトガルやフランスでの現地調査や現地研究者との意見交換を行うことができなかったことに加え,研究成果の発表は国内学会(都内)で行われたため,これらに係る旅費が発生しなかった.次年度は,ポルトガルやフランスの国立図書館等の現地調査等を行う予定である.また,コーパス作成作業では,古ポルトガル語や古仏語に精通した研究者たちに協力を仰ぐことで,作業の正確性および効率を高めていきたいと考えており,これらに係る人件費も有効に活用していきたい.
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