2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K00499
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
磯部 美和 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (00449018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡部 玲子 専修大学, 文学部, 教授 (60512358)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 言語獲得 / 日本語 / 動詞反復応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生成文法理論に基づく言語理論研究及び言語獲得研究における研究課題である、真偽疑問文に対する応答を幼児がどのように解釈するのかという問いに、実験を実施することで取り組み、得られた実証データに基づいて、言語獲得理論と生得的言語知識を司る言語機能のモデル構築に貢献することを目的とする。 本年度は、すでに実施していた動詞反復応答 (verb-echo answer; VEA) の理解実験の結果を、先行研究および日本語以外の言語のデータに基づき再検討し、国際学会における研究者との議論内容や助言も踏まえ、 論文を執筆した。先行研究 (Holmberg 2016; Sato & Hayashi 2018等)では、日本語のVEAは、フィンランド語などの言語のように、動詞がVからCへ主要部移動した後、主語を含むTPが省略されたことにより生じると分析されている。日本語とフィンランド語の共通点の1つは「副詞を含んだ解釈のVEA」が可能である点である。たとえば、真偽疑問文「太郎は本を静かに読んでいるの」とVEA「読んでいないよ」から成る対話において、VEAは真偽疑問文中の副詞を含んだ「太郎は本を静かに読んでいない」と解釈される。一方、タイ語はVEAを許すが「副詞を含んだ解釈のVEA」は可能ではないようである。このような事実から、VEAを許す言語における変異を制御するしくみが存在する可能性が考えられ、VEAの獲得に関する予測が導かれる。すでに実施した日本語を母語とする4~5歳児を対象とした実験では、この予測と一致した結果が得られており、先行研究の統語分析およびVEAに関する言語間変異を司るしくみの提案の妥当性を高めている。これらの内容を論文にまとめ、まもなく学術雑誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動詞反復応答に関する先行研究を調査し、日本語以外の言語のデータの検討を行った。日本語を母語とする幼児に対して実施したVEAの理解実験の結果を再検討し、論文を執筆した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの成果に基づき、連言接続詞「~も~も」が含まれる真偽疑問文に含まれるVEA、および否定真偽疑問文への応答の獲得に関する新たな実験を準備・実施し、結果を分析する。並行して、子どもと養育者の発話を記録したCHILDESを用いて、VEAおよび否定真偽疑問文への応答に関連する発話がいつ頃どのような形で現れるかを分析する。
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Causes of Carryover |
本年度11月にアメリカで開催された国際学会に参加したが、燃油サーチャージの値上げや急激な円安の影響により、当初想定していた、海外出張にかかる予算を大幅に超えることが判明したため、前倒し支払請求を行った。また同時に、海外出張にかかる予算の不足に備えて、実験実施のために必要な物品の購入を控えた。次年度は、本年度に予定していた実験を実施するため、必要な物品を購入する。
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