2023 Fiscal Year Research-status Report
Microvariations of information structure and word order in Bantu Languages
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23K00501
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
米田 信子 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 教授 (90352955)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | バントゥ諸語 / 情報構造 / 語順 / 主題性 / マイクロバリエーション / 国際共同研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
バントゥ諸語の基本語順はSVOであるが、文頭と動詞直後は多くのバントゥ諸語においてそれぞれ主題と焦点の位置でもある。したがって文法関係による語順と情報構造による語順に衝突が起きる場合がある。その「折り合い」の付け方は言語によってさまざまである。本研究の目的は、情報構造と語順がどのように関わり、文法関係と情報構造がどのように「折り合い」をつけているのか、また語順以外の情報構造表示手段と語順がどのように関係しているのかを明らかにし、バントゥ諸語に見られる情報構造表示のバリエーションを検討することである。初年度の2023年度は、タンザニアのバントゥ諸語を対象に、2022年度までの課題「バントゥ諸語における主語のプロパティに関するマイクロバリエーション研究」で得られた研究成果を土台にして主題性と語順に関する現地調査を行った。具体的には、①主題文・焦点文・中立叙述文の語順、②文頭と動詞直後に置くことができる要素の条件、に焦点を当てた。 【現地調査】 調査対象にした言語は、タンザニア大陸部で話されているヤオ語とフィパ語、およびザンジバル島で話されているスワヒリ語諸方言である。ザンジバルの調査では、島内4ヵ所で、マテムェ方言、ドンゲ方言、パジェ方言、タウン方言のデータを収集した。 【研究成果発表】 2022年度までの課題の成果に2023年度に収集したデータを加え、バントゥ諸語における主語の主題性と語順の関係に見られるマイクロバリエーションをまとめ、共著の英語論文を執筆した。また2024年8月に開催される第10回国際バントゥ諸語学会で発表するために、主題性と語順に関する要旨を提出し、採択された。さらに2024年3月には、他のアフリカ諸語研究の科研プロジェクトと合同で海外の共同研究者たちを大阪大学に招聘し、2日間の国際ワークショップを開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の初年度にあたる2023年度は、当初の予定通り、タンザニアにおいて、ヤオ語、フィパ語、スワヒリ語ザンジバル諸方言のデータを収集した。特にスワヒリ語のザンジバル方言に関しては、島内4ヵ所でデータを収集することができた。現在はそれらデータの整理・分析を行っている。調査項目として、当初は、①主題文・焦点文・中立叙述文の語順、②文頭と動詞直後に置くことができる要素の条件、③語順以外の主題・焦点表示ストラテジー、という3点を考えていたが、2023年度は主に①と②の調査のみとなった。調査項目の点では「予定よりも遅れている」ともいえるが、スワヒリ語の方言に関しては予定以上の数の方言からデータを収集することができた。 成果発表のほうでは、2024年度にタンザニアで開催される第10回国際バントゥ諸語学会で発表するための応募要旨を提出し、すでに採択されている。また、主語の主題性と語順の関係に関する英語の共著論文を執筆して投稿した。 以上のことを総合的に考え、調査・分析についても、成果発表についても、おおむね予定通りに進展している、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度の中心は現地調査でのデータ収集と国際学会での成果発表、2025年度の中心はそれまでのデータ分析と一般化、および論文の執筆である。 【現地調査】 2024年度はウガンダとルワンダ、2025年度はナミビアで調査を行う予定である。2024年度については、8月に開催される2つの国際学会においても、参加しているバントゥ諸語の母語話者からできる限りデータを収集しようと考えている。収集するデータは、①主題文・焦点文・中立叙述文の語順、および②文頭と動詞直後に置くことができる要素の条件だけでなく、③語順以外の主題・焦点表示ストラテジーについても調査項目に加える。特に2025年度は③を中心に据える。 【成果発表と研究打ち合わせ】 2024年8月には、3年に1度開催される世界アフリカ言語学会議(ナイロビ、ケニア)と、隔年で開催される国際バントゥ諸語学会(ダルエスサラーム、タンザニア)が開催される。それらの学会においてバントゥ諸語の情報構造のマイクロバリエーションについて発表する。また、学会終了後には海外共同研究者たちと研究打ち合わせを行う。最終年度の2025年度は、それまでの成果を論文にまとめる他、海外共同研究者たちと2026年度の国際学会の発表および2026年度以降の共同研究の準備を始める。
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Causes of Carryover |
2023年度は、本課題の他に研究分担者になっている課題が2つあり、海外調査旅費のうち最も金額の大きい飛行機代をそれらの課題から支出したため、本課題の支出は予定よりも少なくなった。また、10月に英国での研究打ち合わせを予定していたが、先方の都合により英国出張を延期することにした。しかしながら3月に国際ワークショップが予定されていたため、出張は「延期」ではなく「中止」とし、その旅費を2024年度に開催される国際学会に用いることにした。 2024年度の8月に開催される2つの学会のうち、当初の予定ではタンザニアで開催される国際バントゥ諸語学会のみに出席する予定だったが、2023年度から繰り越した予算を用いてケニアで開催されるアフリカ言語学会議にも出席する。
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