2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K00593
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
保坂 道雄 日本大学, 文理学部, 教授 (10229164)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 古英語 / 中英語 / 助動詞連鎖構文 / 機能投射構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代英語には、しばしば助動詞が連鎖する構造が観察される。またその際語順は固定的(might+have+been+doingなど)であり、その他の語順(might be having doneなど)は許されない。しかしながら、初期の英語を見ると、使用できる助動詞の数は限定的であるが、その語順の自由度は高いことが知られている。本研究では、こうした英語の助動詞連鎖構造の発達に焦点をあて、変化の実態の解明とその背後にある構造的変化について考察することを目的としている。 令和5年度の主なる研究は、古英語から中英語にかけての助動詞連鎖構文の語順変化を、York-Toronto-Helsinki Parsed Corpus of Old English Prose及びPenn-Helsinki Parsed Corpus of Middle English 2の2つの文法タグ付言語コーパスの分析をもとに、計量的及び理論的考察を行った研究である。本研究では、特に、古英語の語順の多様性について議論を深め、英語の初期段階では、機能投射構造が発達途上にあったため、こうした多様性が生じたことを論じた。なお、近代英語協会第40回大会シンポジウムにて、その研究成果を発表した。 また、助動詞beとhaveを有する完了形構文の歴史的発達に着目し、如何なる動詞と共起するかについて、EEBO、COHA、Google Booksといった大規模言語コーパスを用いて計量的に分析を行った研究も本研究費に基づく成果の一部である。この研究により、英語の完了形構文の発達が適応的言語進化の一例であることを論じることができた。なお、本研究は、海外の研究誌であるHumanities & Social Sciences Communicationsに共著論文して掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和5年度の研究目標は、古英語における(助)動詞連鎖構造について実証的分析を行い、かつ古英語の語順に関する理論的考察を行うことであった。令和5年6月に開催された近代英語協会第40回大会での研究発表では、まさにこの点を中心に議論を行った。古英語の(助)動詞連鎖構造の語順は、現代英語の「might+be+過去分詞」のような固定的語順ばかりではなく、「過去分詞+be+might」や「might+過去分詞+be」のような多様な語順が存在していたことを古英語の言語コーパスであるYork-Toronto-Helsinki Parsed Corpus of Old English Proseを用いて検証し、その理由として、古英語のおける機能投射構造が発達途上にあったことを論じ、その背後に言語の文化進化の過程が存在することを仮説として提示した。こうした研究はこれまであまり行われておらず、新たな歴史的言語研究の方法として提示できたことは意義のあることであると思われる。なお、本研究では、中英語の言語コーパスであるPenn-Helsinki Parsed Corpus of Middle English 2の分析に基づき、中英語における助動詞連鎖構造の語順変化についても言及しており、次年度の研究を先取りする形で進めることができた。 以上、現在の研究の進捗状況は当初の計画以上に進展している。また、先に述べた完了構文の発達等の議論にまで拡張することができ、今後研究の幅を広げることも検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度の研究は、中英語における助動詞連鎖構造の実証的及び理論的考察を中心に行うことを予定しいる。「現在までの進捗状況」にて説明した通り、中英語に関する研究も既に着手しており、今後更に深く議論を行い、英語の機能投射構造発達について計量的及び理論的考察を深化させる予定である。特に、理論的側面では、これまでも語順に関するパラメータの設定について多くの議論がなされてきた。本研究は、こうしたパラメータ理論に関しても、言語の文化進化の側面から議論を行う予定であり、新たな研究方法の可能性を提示できればと考えている。 なお、本研究の成果の一部は、令和6年11月に開催される日本英語学会第42回大会にて発表を予定している。
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Causes of Carryover |
令和5年度は、当初購入を予定していたコンピュータ関連機器(ノートパソコン、モニター等)の発売が延期となり、次年度の予算にて購入する予定である。また、国内外の学会へも積極的に参加する予定である。ちなみに、5月に東北大学で開催される日本英文学会第96回大会では研究発表の司会を行う予定であり、また、11月に名古屋大学で開催される日本英語学会第42回大会では、シンポジウムを企画し発表を行う予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Book] ことばの謎に挑む2023
Author(s)
平田一郎、行田勇、保坂道雄、江連和章
Total Pages
315
Publisher
開拓社
ISBN
978-4-7589-2386-6