2023 Fiscal Year Research-status Report
多言語社会ルクセンブルクにおける移民の社会統合のための言語教育政策研究
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23K00652
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小川 敦 大阪大学, 大学院人文学研究科(言語文化学専攻), 准教授 (00622482)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 言語政策 / 言語教育政策 / 多言語社会 / 移民 / ルクセンブルク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題を開始するにあたり、2017年に教育省により発表され、2018年に法制化された「ルクセンブルク語振興戦略」(以下「振興戦略」と記す)について、2022年度に発表した論文に続いて継続的な調査研究を行った。2013年から2023年まで続いた、民主党(DP)を中心とする連立政権はそれまでのキリスト教社会党(CSV)を中心とする保守政権とは異なり(新)自由主義的な価値観を持ち、言語政策についても学校の自由化を推進してきた。人口の半数以上が移民背景を持つにもかかわらず、ルクセンブルク語を母語とすることを前提にドイツ語で識字を行い、その上でフランス語を習得させるというこれまでの言語教育のモデルに必ずしもこだわらず、流動化させる姿勢を見せた。それにもかかわらず「振興戦略」のような揺り戻しとも見られる政策が発表されたが、実際の運用はどのようになっているのか、文献での調査をした上で実際に調査を開始した。具体的には、「振興戦略」によって設立された「ルクセンブルク語センター」でのインタビュー調査を行った。ルクセンブルク語センターは既存のルクセンブルク語オンライン辞典委員会がスライドする形で作られたものであり、これまで通りオンライン辞典の拡充に携わりながら、振興戦略で示されたルクセンブルク語に関する問い合わせへの対応、ルクセンブルク語を広めるためのイベントを開催していることがわかった。一方で一言語主義に陥るようなことはなく、あくまで多言語主義を貫く従来の姿勢についても明らかになった。 また、2022年秋からプロジェクトベースでフランス語による識字教育が開始された。これはこれまでのルクセンブルクの言語教育政策の根幹に関わるものであり、どのような政治的言説のもとに作られていったのか等について調査を行った。 これらについては2024年度中に研究成果として発表していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度中に研究成果発表ができなかったため。2024年度中に順次成果発表を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
識字教育政策については引き続き文献やインタビューによる調査を行う。また2024年は現場の教員や教育省での調査も行う予定である。
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Causes of Carryover |
海外出張が当初の予定よりも短期となったことや、一部のOA機器についてリプレースを翌年度に遅らせたため。2024年度は海外出張での使用が見込まれることや、古くなったOA機器を買い換えるなどする予定である。
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