2023 Fiscal Year Research-status Report
e-Learning学習方略の分析と、方略使用を他者調整から自己調整に導く方略指導の構築
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23K00713
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
佐々木 顕彦 武庫川女子大学, 文学部, 教授 (00779192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 理 関西大学, 外国語学部, 教授 (40206941)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | e-Learning / 学習方略 / 自己調整 / 他者調整 |
Outline of Annual Research Achievements |
【前期】授業外におこなう英語リスニング学習ツールとしてのe-Learningに取り組む日本人大学生を対象とし、効果的・効率的に学習を進めるために意識的に使用する学習方略を教示して使用させ(other-regulation:他者調整)、それらの効果を確認する研究をおこなった。学生を2つの群に分け、実験群には10週間にわたって学習方略を教示し、統制群には教示をおこなわなかった。分析の結果、実験群の学生は、統制群の学生に比べて、定期的かつ反復的にe-Learningに取り組んでおり、また、各レッスン最後にある確認テストの点数から観測される習熟度も高いことがわかった。これらのことから、e-Learningにおけるother-regulationには、学習者の学習行動とその成果に対して、一定の効果があることが確認された。 【後期】学習方略の教示は一切おこなわず、引き続きe-Learningを用いた学生の学習行動のデータを収集した。分析の結果、前期観測された定期的かつ反復的学習行動はほとんど見られず、レッスン最後の確認テストの平均点も下がっていた。このことは、other-regulationによって使用した学習方略は、必ずしもself-regulation(自己調整)的な使用に発達するわけではないことを示唆している。一方、数は少ないが、前期に教示された学習方略を適宜用いながら定期的かつ反復的にe-Learningに取り組んだ学生が数名抽出された。現在、これらの学生への半構造化インタビューを通して、彼らが用いた学習方略を「調整された方略連続体」のother-regulated、mostly other-regulated、mostly self-regulated、self-regulatedに分類する作業をおこなっており、この結果を今夏の国際学会で発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、授業外英語学習ツールとしてのe-Learningに取り組む日本人大学生が、効果的・効率的に学習を進めるために使用する学習方略を抽出し、それらを「調整された方略連続体」上にプロットする作業をおこなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
教師による方略指導が、学習者のe-Learning学習方略の使用とその調整に与える影響を調べる。方略指導はe-Learningを授業外学習として課している授業(計15回)の中でおこない、その内容は、①前年度の前期におこなった学習方略の教示、②学習者同士で方略使用の経験などを共有するディスカッション、③教師による定期的なリマインダ提供とする。学習者の方略使用ならびに方略調整の変化については、前年度と同様、半構造化インタビューでデータを収集し、これらを「調整された方略連続体」に落とし込んで方略指導との関係を分析する。これにより、方略指導が学習者の方略使用やその内在化(other-regulationからself-regulationへの変化)に与える影響を明らかにし、国内外の学会で発表するほか、国際研究誌に英語論文として投稿する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、①購入を予定していた設備備品を既存のもので代用したこと、②学会発表のための旅費の支出が少なかったこと、③インタビュー参加やデータ入力のための人件費がかからなかったこと、の3点が挙げられる。 次年度は、インタビューやデータ処理を積極的におこなうことで人件費を使用し、また、前年度に達成できなかった学会発表をおこない、論文執筆を進める予定である。
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