2023 Fiscal Year Research-status Report
日本語母語話者による英語文法の習得困難度検証とその英語教育への応用
Project/Area Number |
23K00750
|
Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
横田 秀樹 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 教授 (50440590)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白畑 知彦 静岡大学, 教育学部, 特任教授 (50206299)
大瀧 綾乃 静岡大学, 教育学部, 講師 (60840676)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 文法習得 / 目的語省略 / テンスとアスペクト / 文法指導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はコロナ禍の影響を見ながらのスタートとなったが、日本人英語学習者(JLEs)にとって英語の文法項目のうちどの習得困難かまたは容易であるかを調査した白畑・横田(2023)のデータを再検証し、誤りの多かった目的語省略、テンス(過去形)、アスペクト(現在完了)に焦点を当てて研究を進めることとした。 特にそれぞれの文法項目において、動詞によって習得困難度が異なる点に注目し、各項目における英語教育及び第二言語習得研究の分野の先行研究を多数収集し、それらをまとめ、問題特定のための手がかりを探究した。また、データの収集方法を検討し、目的語省略に関しては文法性判断テストを実施し、テンス(過去形)、アスペクト(現在完了)については、学習者コーパスを利用しどのような動詞において習得が困難かを明らかにすることを目指した。 目的語省略の実験の結果、JLEsの多くが他動詞の目的語が欠如した文の誤りに気づかず、さらにその誤りの程度が実験に使用した動詞によって異なるというデータを示した。また、テンス(過去形)、アスペクト(現在完了)についても学習者コーパスを利用し100以上の動詞の一つひとつの詳細なデータを調査し、こちらも動詞によって習得困難度(誤り率が異なること)が明らかとなった。 それらの習得困難度の要因を特定するためのさまざまな可能性を検討するなかで、英語の言語学的分析のみならず、JLEsの母語である日本語の分析も同時に考える必要があり、時間をかけて両言語の意味的、構造的な分析を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、別記したように目的語省略に関する発表を行い及び論文を1編執筆した。また、テンス(過去形)、アスペクト(現在完了)についても学習者コーパスを利用し100以上の動詞一つひとつの詳細なデータを調査し、理論的背景の検討とその分析に多くの時間を割き、動詞によって習得困難度異なることが明らかとなってきている。
|
Strategy for Future Research Activity |
収集したデータから動詞によって習得困難度が異なることは明らかになってきたが、本研究の重要な目的のひとつ「文法習得が困難な要因が何かを言語学的に考察する」ことを目指し、現在、動詞に関わる素性獲得(例:自他交替動詞や心理動詞などとの関係)の観点と、関連する統語的要因(例:VP、TP、CP)、そして意味論の観点からも、困難度要因について検証中である。その内容に関しては、次年度(2024年度)に素性及び統語の理論的議論のための発表を海外の言語習得関連学会にて実施し、テンス及びアスペクトに関して英語教育関連学会及び言語習得関連の国内大会で発表を行う予定である。同時に、新たな文法項目の調査を同時並行で進めていく予定である。またすでに調査を終えた文法項目に関しては、現時点で教育的指導について何が提案できかについても検討していく予定である。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により海外への出張を見送ったことと、研究機関内での実験・調査と分析に多くの時間を割くことで旅費等を控えたことにより当該年度の予定よりも支出が少なくなった。しかしながら、複数の研究成果の発表の必要があるため次年度での使用を予定している。
|