2023 Fiscal Year Research-status Report
藤原清衡の守刀は蝦夷地からきたのかー蝦夷刀を軸にした北方交流史研究
Project/Area Number |
23K00797
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Research Institution | Tohoku University of Art and Design |
Principal Investigator |
岡 陽一郎 東北芸術工科大学, 芸術学部, 准教授 (70961829)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 章敏 函館工業高等専門学校, 物質環境工学科, 准教授 (10348500)
瀬川 拓郎 札幌大学, 地域共創学群, 教授 (30829099)
中村 和之 函館大学, 商学部, 教授 (80342434)
寺門 修 函館工業高等専門学校, 物質環境工学科, 准教授 (90402487)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 蝦夷刀 / 考古資料 / 非破壊分析 / 化学分析 / 文献資料 |
Outline of Annual Research Achievements |
平泉藤原氏初代に当たる、藤原清衡の棺に納められていた守刀は、同時代の日本刀とは形態を異にしており、蝦夷刀(北海道産)との類似を指摘する意見もある。もし件の刀が蝦夷刀だった場合、これまで文献資料を中心に論じられてはいても具体的な物証に乏しい、同時代における平泉と北海道との交流を語る、数少ない遺物となるのみならず、北海道を含めた北方世界との交流を示す新たな具体的証拠となるのだった。 この場合の交流とは、単なるモノのやりとりに止まらず、技術や文化なども含まれている。さらに、北方世界の産物を守刀にする行為からは、当該地域が同氏の自己認識と密接に関わっていたとの推測も導き出せる。これらは、われわれの持っていた古代・中世の北海道・東北史や、当時の技術史や文化史、そして平泉藤原氏像を大きく変える可能性を秘めている。本研究は、上記の見通しに基づき、今まで精密な実測が不十分だった清衡の守刀について、三次元実測による形状と特徴の把握。非破壊分析による作成技法、材質などの情報を得る。平行して北海道で出土した蝦夷刀と、本州で出土した刀を対象に同様の作業によるデータを蓄積。これらと平泉での測定数値を比較を通じ、平泉の刀が本当に蝦夷刀であるかどうかを判断、産地同定を試みる。また文献史料からも蝦夷刀について調査する。これらの作業を通じて、北方交易に関わるモノ資料についての知見を得る。 今年度は、まず清衡の守刀との比較材料の捜索を実施した。まず北海道では蝦夷刀との関連性を探る目的で、出土遺物の実見や発掘報告書の検討による同時代の遺物を選び出しと、分析方法や実施について打ち合わせを行い、以後の分析に備えた。平行して、件の刀の特徴を鮮明にするため、主に本州各地で出土した刀の実見も行っている。なお、平泉藤原氏時代の交易や刀に関連した情報を集めるための、文献資料調査も実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は清衡の守刀の実測と、これとの比較検討に供するための材料として、各地で出土ないしは伝世した同時代の刀の実見と実測、およびサンプル採取が可能なものについては当該作業を実施する予定であった。しかし、清衡の守り刀と、北海道厚真町・伊達市内で出土した刀は文化財に指定されており、慎重な取り扱いが求められている。そのため実施には想像以上の手間がかかり、当初の予定に若干の遅れを生じさせている。 対して測定や分析に関しては、分担者によって作業に適した手法の確立が進められている。また、文献資料調査は比較的順調に進行していて、そこ得られた成果の一端は、報告や論文の形で公開を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、各地の刀の実測とサンプル採取については、所蔵先の関係各機関との諸手続を現在よりも迅速に進め、速やかな実施を可能とする環境作りに努め、予定からの遅滞を早急に是正する。また、バックデータの充実を目指して、情報収集を継続する。 これに関連して、サンプルごとに、採取可能な量や形状、採収先の諸環境を掌握し、各サンプルの状態に見合った分析方法や手順をまとめ、実際の作業に当たっては速やか、かつ適切な実施を行えるよう、十分に準備する。 また、文献資料の収集分析作業では、蝦夷刀や本州と北海道(も含めた北方世界)との交流や、刀に対する双方の地域の人々の認識などは、当初想定していた古代末~中世の資料よりも、近世資料の方に有益な情報が多く含まれていることが判明した。また、清衡の守刀が、その評価も含め、どのように人々に意識されていたかも、近世地誌や紀行文中で言及されている。そのため調査対象を、時代と資料の双方で拡大する予定である。
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Causes of Carryover |
実測と分析作業の対象としていた清衡の守刀は、金色堂須弥壇内納置棺及副葬品として国の重要文化財に指定されている関係から、実測と分析には事前準備に手間がかかり、その結果、年度内の実施が能わず、事前に想定していた関連予算の執行には至らなかった。同様に、守刀との比較検討資料に最も相応しいと評価していた、北海道厚真町内での出土品もまた、「厚幌ダム遺跡群出土の擦文・アイヌ文化期の精神及び葬送儀礼に伴う遺物群」として、2022年11月に町の文化財になっている。こうしたこともあり、取り扱いや諸手続が当初予定していたものより難しくなり、こちらも年度内の関連予算執行が難しくなった。 今年度は、関係各機関との折衝を最大限努力し、計画の遅滞を取り戻すち同時に、適正な予算執行を目指す。
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