2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K00813
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉川 真司 京都大学, 文学研究科, 教授 (00212308)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 古代荘園 / 荘園史 / 古代寺院 / 弘福寺 / 法隆寺 / 東大寺 / 興福寺 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「古代寺領荘園の中世的展開」を具体的に考えるため、法隆寺・弘福寺・東大寺の古代荘園から適切な事例を選び、原史料と現地に即した検討を進めることとしている。今年度の研究においては、当初計画をやや変更した部分もあったが、以下のような研究実績を得ることができた。 (1)東寺文書(東寺文書・東寺百合文書・教王護国寺文書)を博捜し、東寺末寺となった弘福寺の古代荘園に関する史料を集成した。すでに目録と仮釈文は完成しており、弘福寺領荘園を考えるための基礎作業を終えた。 (2)個別荘園の研究として、法隆寺領播磨国鵤荘と東大寺領美濃国大井荘について、これまでの調査・研究を再検討し、荘園故地を踏査することにより、古代荘園としての実態を把握した。前者については、弥生時代に始まる水田地帯が5世紀にミヤケとされ、7世紀に法隆寺に施入されて古代荘園となり、ほぼそのままの領域が11世紀中葉に中世荘園に転成したこと、古代には田租・出挙を中心とした経営が行なわれたらしいことなどを解明した。後者については、墾田主体の荘園が古代から中世へ連続する様相をよく示し、その間に荘域が約2倍に拡大したことを、新発見の文書を吟味しつつ現地に即して論じることができた。このほか興福寺領古代荘園にも中世に連続する様相を見出し、その予備的考察を行なった。 (3)教王護国寺文書のうち、5279カットのデジタル撮影を行なった。その結果、文書群全体の8割強がデジタル画像としてデータ化された。このデータは本研究で活用できただけでなく、近い将来におけるネット公開に向けて大きな蓄積となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画をやや変更した部分もあるが、(1)弘福寺領古代荘園に関する史料集成、(2)古代寺領荘園に関する個別具体的な研究、(3)教王護国寺文書のデジタル撮影、という年次計画の三本柱を着実に推進することができた。また(2)については、研究代表者が責任編集した書籍を刊行し、古代荘園に関する新しい知見をもたらした。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究が順調に遂行できたため、今後の研究も当初計画に沿って推進することが可能となった。 古代荘園の個別具体的な研究に関しては、今年度の史料集成作業に立脚して、弘福寺領古代荘園の調査・検討を進めていくことになる。東大寺領・興福寺領についても、適切な事例を再吟味し、既存の調査・研究を批判的に検討しつつ、史料読解と現地踏査を行なう予定である。これらの作業を通じて、古代から中世へ連続・発展する寺領荘園の特質を、経営実態や地域性を中心としながら解明していくことになる。 教王護国寺文書のデジタル撮影もさらに進め、全点の撮影完了にこぎつけたい。デジタル画像データは、本研究において十全に活用するだけでなく、京都大学貴重資料デジタルアーカイブで公開し、研究者の利用に供する。そのためには古文書一点一点のデータ整理とメタデータ作成が急務であり、次年度以降はこちらにも力を入れる予定である。
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