2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K00814
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川合 康 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 教授 (40195037)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市澤 哲 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (30251862)
高橋 典幸 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (10292799)
下村 周太郎 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (40581822)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 金剛寺文書 / 阿観 / 高野山 / 仁和寺 / 白炭免 / 禅恵 / 根来寺 / 中院流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、約900点にのぼる天野山金剛寺所蔵の中世文書の悉皆調査を行ったうえで、Ⅰ金剛寺の伽藍整備と地域社会・中央貴族社会の関係、Ⅱ金剛寺と興福寺・春日社の関係、Ⅲ金剛寺領の訴訟をめぐる公家・幕府法廷の動向、Ⅳ金剛寺経典の紙背文書の性格、という四つの観点から、平安末期から戦国期にいたる金剛寺の展開の様相を総合的に解明するものである。 研究の初年度にあたる令和5年度は、金剛寺所蔵の中世文書のうち、『大日本古文書 金剛寺文書』『河内長野市史 史料編二』未所収の古文書が多く収められている37-2箱、39-1・2・3箱を中心に、9月2日・3日と12月2日・3日の4日間、金剛寺客殿において文書の熟覧・調査を行うとともに、専門業者による高精密デジタル画像撮影を行った。特に、Ⅳの観点に関わるm0215『釈論第六抄出』紙背文書については、専門の業者に依頼して冊子を開いて紙背文書を熟覧・撮影し、元のように綴じ直した。調査・撮影を行った文書数は187点、317カットであり、1点ずつ古文書の状態を「金剛寺文書 調査・撮影文書目録」に記録した。 また9月2日と12月2日の調査終了後に、河内長野荘において金剛寺文書研究会を開催し、川合康(研究代表者)が「高野山における阿観の住房について」、北山航(研究協力者)が「室町期における河内国金剛寺と高野山」の報告を行った。本研究会によって、高野山にある仁和寺の院家禅定院に阿観が住していたことや、室町期には金剛寺学頭による高野山中院流の継承を正統化する意識があらわれることなど、新たな知見を得ることができた。12月3日の調査終了後には、白炭免の所在した高瀬地区を見学した。 本年度撮影を行った文書のデジタル画像データについては、共同研究者が共有して検討を進めるとともに、広く研究の進展に資するため、必要な手続きを経て河内長野市立図書館において公開を始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の令和5年度は、金剛寺に所蔵される中世古文書のうち、『大日本古文書 金剛寺文書』『河内長野市史 史料編二』未所収の文書が多く収められている37-2箱、39-1・2・3箱を中心に、187点の原本調査と撮影を行った。そのうち119点の文書が新発見のものであり、今後の研究に大いに資することになると思われる。端裏書や裏書も撮影対象とし、全317カットを撮影した。令和4年度まで進めてきた基盤研究(C)「河内国金剛寺文書に基づく中世地域社会史の研究」と合わせて、733点の文書調査を終えたことになる。 調査・撮影の結果は「金剛寺文書 調査・撮影文書目録」に記録し、『大日本古文書 金剛寺文書』『河内長野市史 史料編二』未所収の文書については、その旨を備考欄に注記した。一紙文書は、『大日本古文書』『金剛寺経蔵聖教目録』の番号を鉛筆書きした中性紙の封筒に保管し、何通もの文書の裏をかえして紙縒りで綴じ、冊子状にして経典などが書かれていた文書については、一通ずつ取り外して両面を撮影し、綴じられていた順番は文書番号の枝番に反映させた。金剛寺・河内長野市教育委員会・同市立図書館の職員と協議のうえ、紙縒りで綴じられていた文書の傷みを拡大させないよう、冊子状に綴じ直すことはせず、中性紙封筒に入れて保存することとした。固く冊子状に綴じられていたm0215『釈論第六抄出』紙背文書については、専門業者に依頼して冊子を解体し、紙背文書を調査・撮影したのち、元のように綴じ直して保管することとした。 これらの撮影画像は、すでに河内長野市立図書館内で公開を始めており、多くの研究者や市民の利用に供している。また、調査と並行して開催している金剛寺文書研究会では、研究代表者の川合康と研究協力者の北山航氏が、金剛寺と高野山・根来寺との関係を再検討する報告を行い、金剛寺をめぐる教学ネットワークの理解を大きく前進させた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の初年度にあたる令和5年度の調査は、金剛寺所蔵の中世文書のうち、『大日本古文書 金剛寺文書』『河内長野市史 史料編二』未所収の古文書が多く収められている37-2箱、39-1・2・3箱を中心に187点の調査・撮影を行った。 2年目の令和6年度は、63点の中世文書と110点の中世の帳簿類が収められていることを確認している「長の31」箱の調査・撮影を進める予定である。金剛寺・河内長野市教育委員会・河内長野市立図書館と調整したうえで、7月29日に事前調査、8月31日・9月1日に1回目の調査・撮影、10月24日に事前調査、11月30日・12月1日に2回目の調査・撮影を計画している。原文書の調査・撮影が終了したものについては、初年度と同様に、「金剛寺文書 調査・撮影文書目録」に必要な情報を書き込み、目録を更新する。河内長野市立図書館で公開する画像データも、調査・撮影の進捗状況に合わせて追加していくことにしたい。また、8月31日と11月30日には金剛寺文書研究会を開催し、「Ⅲ金剛寺領の訴訟をめぐる公家・幕府法廷の動向」の観点などから知見を深める予定である。 なお、現時点で『大日本古文書』『河内長野市史』に所収されている中世文書のうち、『大日本古文書』で9点、『河内長野市史』で16点の文書を確認できていない。おそらく聖教類に紛れて中性紙箱のいずれかに保管されているものと推測される。「長の31」箱の調査が終了したのちは、『金剛寺経蔵聖教目録』の備考欄に中世文書らしき記載のあるものを網羅的に調査・確認し、中世文書の保管先を可能な限り明確化したい。本研究の最終年度には、「金剛寺文書 調査・撮影文書目録」を冊子体の報告書にまとめ、今後の研究や文化財保存に資する予定である。
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Research Products
(7 results)