2023 Fiscal Year Research-status Report
Basic Research on Cultural Activities and Interaction at the Early Modern Imperial Court
Project/Area Number |
23K00827
|
Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
若松 正志 京都産業大学, 文化学部, 教授 (20230922)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 朝廷文化 / 古今伝受 / 歴史教育 / 教科書 |
Outline of Annual Research Achievements |
4年計画の1年目にあたる2023年度に予定していた計画は、「近世朝廷における文化活動について、先行研究の動向を押さえるとともに、全体的な傾向を把握すること」であり、先行研究・各種基本資料・関連資料の博捜・収集、データベースの活用などにより、近世朝廷でおこなわれていた様々な文化活動をリストアップしたうえで、全体像・時期的変化・特色を把握することであった。 先行研究の把握に関しては、これまで進めてきた、近世朝廷文化に関する日本史及び隣接分野(国文学、美術史、芸能史など)における研究動向について、さらに調査・分析を進め、小文にまとめ、公表した(「近世朝廷文化研究の進展をめざして(覚書)」)。 また、近世の朝廷文化を論じる前提として、近世の天皇・朝廷に関する一般的な理解・認識を確認すべく、高校日本史教科書における江戸時代の天皇・朝廷に関する記述を、研究動向との関連も含め分析し、研究論文にまとめ、公表した(「歴史研究の進展と高校日本史教科書の記述」)。この論文は、歴史教育の観点、すなわち戦後の高校「日本史」の展開や、近世初期の天皇権威と関わる豊臣「惣無事令」にも言及しており、貴重な成果だと考えている。 以上の点を含め、近世の天皇・朝廷の文化に関して、一般社会人向けの講演・講義、研究会での発表を、あわせて4回おこなった。 一方、近世朝廷の様々な文化活動のリストアップについては、古今伝受(授)関係など和歌関係の図書・資料の収集は進めたものの、まとまった時間が十分にとれず、江戸時代のごく一部の期間の調査にとどまり、全体像・時期的変化・特色の把握については、次年度に持ち越すことになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
勤務先である京都産業大学文化学部・大学院京都文化学研究科における通常の業務(教育・研究・運営)に加え、学部改組について検討する仕事が加わり、多忙になり、十分な研究時間が確保できなかったため。 また、学生のデータ入力の対象を、東京大学史料編纂所の近世編年データベースから、より基礎的かつ大きな広がりをもつ可能性がある『日本史用語集』に変更したため。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度に新たに取り組んだ、歴史教育の視点からのアプローチについては、時代・対象など範囲を広げて分析を進めたい。これによって、近世の天皇・朝廷の特色が見えてくるとともに、日本史全体のなかで天皇・朝廷の位置を考えることにもつながると考えるからである。 2023年度の計画としていた、近世朝廷の文化活動のリストアップと概要の把握については、学生アルバイトによるデータ入力・加工を進めたうえで、研究時間を確保し、集中的に分析作業を進めていきたい。 2024年度の計画としている、近世朝廷の和歌に関して具体的な活動と広がりを明らかにすることについては、基本文献・資料の収集はかなり進んだので、それらの史資料を中心に、精読・分析を進め、事例を蓄積することに注力したい。近世前期については、比較的研究が進んでいる、後水尾天皇・後西天皇・霊元天皇の時期を中心に、御所伝受や歌会の様子を明らかにしたい。近世中後期については、後桜町天皇・光格天皇の時期を中心に、御所伝受や歌会の様子に加え、その広がりについても追究したい。
|
Causes of Carryover |
2023年度に執行を予定していた経費うち、次年度に多く持ち越したものは、物品費(図書費など。約56,000円)とその他(複写費。約32,000円)である。前者に関しては、関係する図書が近年多数刊行されており、当面必要なもののみ購入した結果、使い残りが生じ、次年度にまわすことになった。後者についても、現時点で必要な分のみ執行することにした結果、使い残りが生じ、次年度にまわすことになった。なお、2024年度になり、図書については早々に、新たに刊行されたものも含め、必要な図書の購入を進めている。複写費についても、必要なものを吟味し、順次執行したい。
|
Remarks |
2023年度の本研究課題に関わる講演、講座、研究会での発表をあげる。 1「京都の歴史のなかの女性と政治・文化―人物研究事始―」(5/7、京カレッジ)/2「江戸時代の天皇と京都」(10/13、双京構想連続講座)/3「近世中期の天皇・親王・公家の日常と活動」(11/20、ラボール学園・日本史講座)/4「歴史研究の進展と高校日本史教科書の記述」(12/27、京都産業大学日本文化研究所月例研究会)
|