2023 Fiscal Year Research-status Report
中世後期における西国武士団の列島諸地域への展開とその由緒―渡辺党渡辺氏を中心に―
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23K00828
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Research Institution | Hanazono University |
Principal Investigator |
生駒 孝臣 花園大学, 文学部, 准教授 (80631986)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 西国武士団 / 系図 / 由緒 / 渡辺党 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中世後期(南北朝~戦国期)の日本列島各地にあらわれる摂津国の武士団渡辺党渡辺氏の末裔に注目して、中世前期(平安末~鎌倉期)以来、畿内近国を本拠地とした武士団が列島各地に展開した歴史的意義を具体的に追究することにある。 2023年度は研究実施計画をふまえて、中世後期の渡辺党渡辺氏関連の史料収集を進めた。具体的には、中世後期に渡辺党渡辺氏の子孫を称した豊後国の渡辺氏に関連する古文書調査を大分県立先哲史料館で実施し(11月14日)、110コマの写真撮影を行った。それらの古文書は、すでに史料集として活字化されているが、全点の翻刻を改めて作成し、本研究の基礎作業である、中世後期渡辺党渡辺氏関連史料データベースへのテキストデータの入力を完了させた。加えて、豊後以外の九州各地に展開した渡辺氏の実例を集めるため、福岡大学図書館川添昭二文庫にて史・資料の調査を行った(11月15日)。同所では豊後渡辺氏のような中世前期以来の畿内・西国武士団の系譜を持つ武士団に関連する史・資料は発見できなかったが、次年度以降も継続した調査を続けたい。 また、『大日本古文書』(毛利家文書、小早川家文書、吉川家文書)『戦国遺文 大内氏編』『山口県史 史料編』『広島県史』(資料編)といった刊本史料集の検索も行い、渡辺氏関連史料の収集を行った。 加えて、渡辺氏関連の史料収集と関連して、南北朝期に渡辺氏と主従関係を構築していた河内の武士団楠木氏の全体像について再検討を行い、中世後期において楠木正成以来の由緒を持つ楠木氏の末裔たちの動向について究明した。それらの成果は、『楠木正成・正行・正儀 南北朝三代の戦い』(星海社、2024年4月)に反映させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である2023年度においては、上記のように大分・福岡での史料調査の実施と史料収集、刊本史料の検索と史料収集を通して、九州北部・山陽地域の渡辺氏関連史料の全容把握と、基礎作業である中世後期渡辺党渡辺氏関連史料データベースの充実化をはかることができた。当初、初年度には広島県立歴史博物館・国立公文書館での調査を予定していたが、既刊史料集掲載史料の原本調査という観点から、事前に下準備を進めていた豊後渡辺氏の原本史料の調査を優先させた。また、今年度実施した山陽地域関連の刊本史料の検索作業は、次年度以降に広島等で実施する調査に寄与するものと思われる。 以上のことから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように2023年度においては、史料収集及び史料調査において、一定の成果をあげ得たものと考える。その成果をうけて2024年度では、引き続き『大日本古文書』等の刊本史料集からの渡辺氏関連史料の収集と整理・分類を継続しながら、データベースの充実化を目指したい。また、広島県立歴史博物館・国立公文書館・東京大学史料編纂所等でさらなる史料調査を実施して、渡辺氏関連史料の収集を進め、未活字のものに限らず活字化されているものの翻刻も作成する。 さらに、2023年度に得られた中世後期の渡辺氏に関する情報と次年度に得られる情報をもとに、中世後期の列島各地に展開した西国武士団の具体事例としての渡辺氏の実態を追究した論考をまとめたいと考える。
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Causes of Carryover |
初年度である2023年度は当初の予定において、複数箇所での史料調査を予定していたが、研究計画の一部変更により、一箇所に留まった。そのため旅費については、多めに計上していたこともあり、全額を使用するには至らなかった。次年度については、東京・広島など複数地域での調査を予定しているため、それらの旅費として使用する予定である。 また、人件費・謝金についても、初年度は人手を要する作業がなかったため、発生しなかった。次年度については、刊本史料の検索やデータベースへのテキスト入力等の作業が大幅に増えるため、それらの仕事を依頼する学生・大学院生の人件費・謝金として使用する予定である。
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