2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K00877
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山田 重郎 筑波大学, 人文社会系, 教授 (30323223)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沼本 宏俊 国士舘大学, 体育学部, 教授 (40198560)
柴田 大輔 筑波大学, 人文社会系, 教授 (40553293)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | メソポタミア / テル・タバン / 楔形文字 / アッカド語 / 古バビロニア時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年9月末から2023年12月始めにかけて研究代表者が90日間、シカゴ大学古代文化研究所(Institute for the Study of Ancient Cultures)に滞在し、同研究所の楔形文字学・西アジア考古学・エジプト学の専門図書館を利用して集中的に研究をおこなった。 主たる目的は、シリア北東部ハッサケ県のテル・タバン文書のうち古バビロニア時代に由来する26点の古バビロニア時代文書の研究である。具体的には、これらの文書の出版用に写真を整理し、ハンドコピー、アッカドの語原文のラテン文字への翻字、英語への翻訳、文献学的注釈、単語集、地名・人名索引、考古学的な出土状況と文書の歴史的脈絡についての解説をつけてモノグラフとして出版することを目指している。 本年度は、これらの古バビロニア時代文書(前18世紀)のうち、特に16通の書簡の研究に目的を絞り、テクストを校訂し、文書の翻字、翻訳を修正し、詳細な訳注を付けた。また、単語表と索引の作成に向けて、すべての単語、地名、人名、神名、月名をリストにする作業を行った。 これらに加えて、関連する言語学的、歴史学的テーマに関連する論文や文献を収集し、その情報を整理し、文書の言語学的・歴史学的位置づけについての理解を深めた。特にこれらの書簡には、タバトゥム市(現テル・タバン)を支配下に置いていたテルカ王イツィ・スムアビの3通の書簡が含まれていることから、当該期のテルカの王国(「ハナ王国」)に関するあらゆる考古学的、文献学的データを収集し、これまでの研究を整理する「覚書」を作成し、今後の研究の基礎を固めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
楔形文字文書解読に必要なあらゆる書物を備えた専門図書館を集中的に利用することで、必要な文献を渉猟しながら、文書の校訂、解読、解釈を行うことができ、研究は予定通りに進展し、書簡文書の研究をほぼ完了することができた。 なお、テル・タバン文書の他の種類の文書ならびに他の遺跡から出土した文書に含まれる膨大な情報の研究を行うことで、書簡文書の解釈と理解の精緻化をはかる必要があるものの、当初の目標はおおむね達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、書簡研究に続いて、7点の行政文書と契約文書の研究を実施する。まだ作成していないハンドコピーを写真をもとに作成し、すべての行政文書と契約文書を校訂、解読、解釈し、訳注を作成したうえで、それらの文書にあらわれる単語、地名、人名をリスト化することが、2024年の目標である。 シリアにある粘土板の現物を校訂することは、現在の政治的状況にかんがみるになお困難なものの、撮影済みの写真を資料として、契約文書上に押された印章の印影の研究にも挑戦することで、押印方法や押印した人物の素性や役職を明らかにすることも試みたい。 これらの研究に続いて、他の関連文書も渉猟して、言語学的、歴史的考察を深め、書体学的特徴についても研究を進める。また適切な写真を選択し、トリミングを施して出版用の写真を準備する作業も並行して進めていきたい。
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